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日銀のマイナス金利の深掘りも、FRBのイールドカーブコントロールも、このタイミングでは必要がない

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 果たしてこのタイミングで中央銀行による追加緩和は必要なのか。たしかに4~6月期GDPは日米欧ともに過去最大規模の減少となった。原因ははっきりしている。新型コロナウイルスの感染拡大とその拡大防止のため強制的に経済活動をストップさせたことによるものである。

 政府や中央銀行として必要なのは、景気の悪化に対処するというよりも、一時的に経済活動を停止させることによって打撃を受けたところを財政政策を主体に救済することであり、あらたな金融緩和策などは必要ない。すでに非常時対応ともいえる大胆な金融緩和策を打ち出しており、それをひとまず継続させることで政府の財政政策を支援する格好となろう。

 景気悪化イコール追加緩和という発想も今回はおかしいと言わざるを得ない。しかも、金融市場に特に動揺が走っているわけでもないし、今回のショックは金融不安が起きているわけでもない。

 しかも追加緩和手段として日銀でのマイナス金利の深掘りは、あくまでやってますよのアピールでしかないと思う。マイナス金利の深掘りにより金融機関への副作用を軽減させるのであれば、そもそも何の効果を狙っているのかすらわからない。仮に円高を気にするのだとしても、あくまでも市場に対する一時的な対処でしかない。

 FRBにしても市場では日銀のようなイールドカーブコントロールを期待していたようだが、イールドカーブコントロール(YCC)が新型コロナウイルス感染拡大を防止するわけでもなく、長期金利を引き下げてもその効果があまり出ないのは日本の事例をみてもあきらか。もしこれが政府の財政拡大による金利の上昇を抑えるものであるとすれば、それは財政ファイナンスを行っていることになる。これは第二次世界大戦下では許されたが、果たしてこのタイミングでそのようなことを行う必要はあるのか。

 そもそも中央銀行がすでに大量の国債を買い入れていることに問題はあるものの、あくまで市場に対する資金供給という意味合いではある。これによって十分に長期金利は抑えられている。ここにあらたな政策を加える必要はないと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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