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地銀の定期預金金利も0.002%に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 全国87の地方銀行・第二地方銀行が今年度に入り、定期預金の金利を従来の5分の1に当たる0.002%へ一斉に引き下げたことが分かったと29日の日本経済新聞が伝えた。

 4月からはメガバンクなどが定期預金の金利を0.002%に引き下げており、地方銀行・第二地方銀行も同様に引き下げた格好となる。

 普通預金の金利は0.001%のところが多く、定期預金の金利も限りなくゼロに近づいたといえる。これでは利息面での定期預金の利点は後退しよう。しかし、それでも銀行の預貯金は今後も高水準を維持することが予想される。  

 利息は限りなく少なくとも現金そのものへの需要も高い。たしかにここにきて金の価格が過去最高値を更新するなどしているが、キャッシュから金に資金が流れているというよりも、投資資金が金などに振り向けられているためといえる。

 そうはいうものの、利子がほぼゼロに近いことで、銀行においておくだけではつまらないという人もいるかもしれない。個人的にはリスク資産への投資は資金が減る恐れもあることで、そのリスクがないことも重要と考える。金への投資も当然リスクはある。

 あまりに利子が少ないことで、それよりも高い利子を求める人もいるかもしれない。しかし、高い利子にはその分、リスクが潜んでいるということを認識すべきである。そのリスクが何であるのかが、もしわからなければ、そのようなものに資金を振り向けるべきではない。リスクを知った上での資金の振り向けならば自己責任で行ってほしい。

 ただし、ここまで低くなってしまった銀行の預金金利に比べて、0.05%という最低保証金利が維持されているものが存在する。財務省の発行する個人向け国債である。

 これについては1年間換金できないという制限こそあるが、通常の債券に存在する流動性リスク、価格変動リスクはない。信用リスクについては日本という国をどの程度、信用しているのか、この場合、日本が破綻するリスクはどの程度なのかを見極める必要がある。現状、このリスクは低いと言わざるを得ない。ただし、まったくないわけでもなく、この判断も自分で決めることである。

 その個人向け国債、7月発行分はトータルで1000億円台を回復したものの、それでも4月以前に比べて大きく減少している。これは新型コロナウイルスにより金融機関の営業ができなかったことや、買い手にとっては利子と認識されていたキャンペーンがなかったことなどが影響しているようである。しかし、利子やリスク、さらに買入限度額もないなどの利点を考えると、本来、個人の資金はもっと個人向け国債に向かってもおかしくはないと思うのだが、それほど認識が広まっていないということなのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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