11日のダウ平均は過去4番目の下げとなっていたが、この大幅反落には前兆があった
11日の米国株式市場、ダウ平均は1861ドル安となり下げ幅は過去4番目の大きさとなった。11日に初めて1万台をつけていたナスダックも527ポイントの下落となった。
この株価の下落について、経済再開に踏み切った州を中心に6月に入って新型コロナの感染が再拡大し、米国の新型コロナウイルスの感染の第2波が意識されたとか、FRBのパウエル議長が景気の先行きに対して悲観的な見方を示したからとされた。それも確かにあったかもしれないが、少なくとも11日に何か特別な売り材料が出たというわけではないことも確かであった。
株価の動きだけをみると突然の調整に見えなくもない。しかし、その前兆はほかの市場でみえていた。たとえば外為市場での円やスイスフランの上昇である。ドル円でみると8日あたりからすでに調整局面入りしていた。5日に110円に迫っていたドル円はそれ以降、下落していた。
米長期金利も同様の動きをみせていた。5日に0.9%台に上昇していた米10年債利回りはそこから低下基調となり、11日には0.6%台に低下していた。
原油先物も5日に40ドル近くにあったが、その後下落基調となり、11日には36ドル台に下落した。
円高、米長期金利の低下、そして原油安となれば、これは典型的なリスク回避の動きといえた。
しかし、米国株式市場は5日の米雇用統計が良い意味でサプライズとなったことに加え、ナスダックの過去最高値と1万ポイントの更新が見えていたので、他市場ではリスク回避の動きが出るなか、そこまではいったん上昇をみせたともいえた。
10日のFOMCでは金融政策は現状維持とした。ゼロ金利政策を2022年まで続ける姿勢をみせたことで、より長めの金利に低下圧力を加える姿勢を示したものの、追加緩和には慎重な姿勢をとってきたともいえる。
これも結果としてリスク回避の動きというか株式市場には利益確定売りを入れるきっかけにされたものと思われる。
もうひとつ、特に株価については懸念材料が出ていた。トランプ大統領の支持率の低下である。
ナスダックの1万ポイント乗せで、ひとまず達成感も出てきたものとみられる。新型コロナウイルスの感染の第2波についても警戒感は残る。期待先行でリスクオンの動きが強まっていただけに、その反動も今回、大きなものとなった。米大統領選挙の行方も不透明要因となってきたことで、いったんここは利益確定売りが入りやすいといえる。ただし、地合そのものが変化したのかどうかは、もう少し様子をみる必要がある。12日のダウ平均は反発し477ドル高となっていた。