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株式市場での急落など、リスク回避の動きはいつまで、どこまで続くのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 16日の米国株式市場では、ダウ平均は一時3000ドルを超す下げとなり、引けは2997ドル安となり過去最大の下げ幅を記録した。また、ナスダックは970.283ポイント(12.3%)安となり、1日の下落率としては過去最大を記録した。

 FRBの大幅な利下げによる実質的なゼロ金利政策や量的緩和策の再開にもかかわらず、株価は急落した。16日の米国債は買われたものの、ドイツなど中核国を含めてユーロ圏の国債は軒並み下落し、原油先物価格も大幅に下落、さらに金の価格も下落した。

 リスク回避のキャッシュ化が進んでいるともいえる。このためいわゆるリスク資産の価格はかつてないほどの下落となってしまっている。リスク資産を抱えている人達にとって、不安感は強いと思われる。今回のこの株式市場の急落など金融市場が動揺したきっかけが、新型コロナウイルスという目に見えない恐怖の拡大によるものであることは間違いない。いまのところ治療薬なども発見できていないことで、まさに世界が恐怖した。

 しかし、それ以前に米国を主体とした緩やかな景気の拡大と中央銀行の積極的な金融緩和策による過剰流動性相場が相まって、経済実態から乖離した格好で株価は上がっていた。それほど景気に過熱感はないにもかかわらず、どうして米国や欧州の株価指数は過去最高値を記録したのか。これはいずれ大きな調整を迎えるであろうとの懸念を抱いていた人も多かったのではなかろうか。

 その調整のきっかけが新型コロナウイルスの感染拡大によるものと予言できた人もいなかったはずである。米中の貿易摩擦や中東リスク、英国のEU離脱などがそのきっかけになるのではとの懸念もあったが、結果としてそれらは一時的な調整を招いたに過ぎなかった。ただし、いずれこのような調整が起こりうることは確かであった。

 調整とはいうものの、今回の金融市場の動きは急落と急騰が繰り返される非常に値動きの荒い展開が続いている。これはアルゴとも呼ばれるコンピュータを使ったシステム売買が価格の動きを増幅させている面もある。たぶんこれまで経験のない値動きとなっているだけに、流れに乗るタイプの取引手法も、またいわゆる逆張り的な手法も今回はかなりの痛手を被っているのではないかと思われる。それだけ今回の相場変動は異質ともいえる。

 原因が新型コロナウイルスの世界的な感染拡大であり、その拡大がある程度終息するなり、効果の出る薬の開発等ができれば、不安感は後退し、株価の下落は止まることが予想される。しかし、そのタイミングがいつかなのかを予測することも難しい。

 これを書いている17日の午前のタイミングで、日経平均は大きく値を戻し、東京時間で米株価先物は大きく上昇し、円安も進んでいる。短期的なショートとロングのポジションも歪なものになっているとみられ、何かしらの要因で大きく値が動くのも今回の相場の特色ともいえる。

 世界経済への実質的な影響が出てくるのはこれからとなり、東京オリンピックの開催も危ぶまれている。いまのところはリスク回避の動きがいつまで、どこまで続くのかは見通せない。このため楽観的に、また元に戻るよとの見方も危険であることも確かである。

 もし個人の方で、何かしらリスク資産のポジションを抱えていたのであれば、ひとまずその現在価値がどの程度なのかを確認し、さらに途中売却が可能なのか確認してほしい。自らの判断でそのリスク資産を保有続けるのか処分すべきかは判断するしかない。残念ながら私は適切なアドバイスはできない。特に資産の価格変動が今後どうなるのかは神のみぞ知ると思っている。

 逆張り的な発想で押し目買いを狙うのも自由ではあるが、14年間のディーラーとしての経験上、逆張りができるのは本当に天才的な感覚を持った人物に限る。落ちたナイフはつかむなという言葉もある。かなり大きなリスクがあることも承知の上で向かう必要があろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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