ほとんど無視された格好の米雇用統計、市場の焦点は新型肺炎による影響に
7日に発表された1月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比22.5万人増となり、予想の16万人程度を大きく上回った。前月分は14.7万人増と速報値の14.5万人増から修正された。
家計調査に基づく失業率は3.6%となり、前月の3.5%から上昇したものの、半世紀ぶり低水準に止まっている。平均時給は前年同月比3.1%増となり、前月の3%増から改善している。
総じて良い数字となっていたものの、7日の米国市場ではこの雇用統計はほとんど材料視されなかった。
FRBが7日に発表した金融政策報告書で、新型肺炎の発生は中国景気に混乱を招き、世界景気にも広がる可能性があると指摘したことなどから、あらためて新型肺炎による世界経済への影響も意識され、7日の米国株式市場では高値警戒も加わって下落した。
キャタピラーなど中国売上高が大きい銘柄や、中国依存度が高いアップルなどのハイテク株、さらにはクルーズ船絡みやカジノ銘柄なども売られていた。
前日6日の米国株式市場では主要3指数が過去最高値を更新していた。新型コロナウイルスに対する過度な不安によるリスク回避の動きのアンワインドが入っていた。しかし、高値を更新すると再び、不安心理が出てきたものとみられる。
新型コロナウイルスがいつまで、どの程度拡大するのか、現状は見通せない。中国以外での国での拡大が今後起こりえるのかも注目されている。さらに10日あたりから中国企業の活動が再開されつつあるものの、完全に復帰できるような状況にはない。このため各所にサプライチェーンへの影響がでてくることも予想される。
日本国内でもインバウンド需要が大きく後退することも予想され、少なからず国内景気にも影響を及ぼすことも予想される。
7日の動きをみても、市場は足元の景気を映す雇用統計や、それによるFRBの金融政策への影響等はひとまず置いといて、今回の新型肺炎による影響を再び注視しはじめている。