IMFからの提言に日銀の物価目標柔軟化も
国際通貨基金(IMF)は25日、日本経済について分析した2019年の報告書を公表した。
このなかで、今後の消費増税に関して次のような提言があった。
「IMFスタッフのシナリオでは、高齢化のコストをまかなうためには、消費税率を2030年までに15%に、2050年までに20%に段階的に引き上げる必要がある。」
また、現在実施中の消費税率引き上げの影響を緩和する臨時の措置の延長を検討すべきであるとも指摘した。
財政政策については、短期的には、財政政策と所得政策は日銀のリフレーションに向けた努力を補い、構造改革の実行に寄与するものでなければならないとも報告書で指摘。「リフレーションに向けた努力」というのが腑に落ちないが、ある意味、IMFらしさとも言うべきか。
IMFは加盟国と年1回、その国の経済情勢について協定第4条に基づく協議をしている。25日に約2週間の日程を終え、来日したゲオルギエバ専務理事が麻生太郎財務相に上記の報告書を手渡した(25日付日経新聞)。
そのゲオルギエバ専務理事が、日本経済新聞などのインタビューに応じ、報告書の内容を確認するとともに、日銀の物価目標を現在の2%から、幅をもたせて金融政策を柔軟にしてはと提案したそうである。やっとリフレーション政策に肩入れしているかに思えるIMFも現実を見据えた考え方を示してきた。
長短金利操作については、誘導目標をゼロ%とする対象を10年物国債から「満期のより短い国債に変更すること」を提起したともされている。
いまさらながらではあるが、ゲオルギエバ専務理事が提言したように、日銀の物価目標の柔軟化は進めて行くべきである。それによって日銀の金融政策そのものも柔軟に行えるようになる。すでに2%の物価目標達成は現状は無理があり、それを素直に認めるべきである。そうでもしないと日銀の金融政策がより複雑化というか難解なものとなりかねない。
ただし、長期金利の操作目標の短期化には個人的には反対である。日銀は現在の政策をイールドカーブ操作とうたっており、長期金利全体のカーブを操作するのであれば、10年や20年あたりを目標として操作する必要がある。
日銀は本来、短期金利操作が中心であったことで、なるべく短めの金利が操作しやすいことは確かであり、長期金利は操作できないという前提もあった。もし、長期金利の目標を短期化したいのであれば、長期金利コントロールそのものを止めるべきであると考える。念のため、短期金利に対する長期金利とは1年を超す期間の金利を指すため、厳密には10年国債の利回りに限られているわけではない。