イタリアの政局の先行き不透明感は拭えない
イタリアの新興ポピュリズム政党「五つ星運動」と中道左派の「民主党」は28日、連立政権を樹立し、今月20日に辞表を提出したコンテ首相を再び首相に擁立することで合意した。マッタレッラ大統領は29日、コンテ氏を次期首相候補に指名し、両党を中心にした新内閣発足に向けた組閣作業を指示した(読売新聞)。
イタリアのコンテ首相は20日に辞意を表明した。連立政権をつくる極右「同盟」と左派「五つ星運動」の対立が激化し、同盟が内閣不信任案を提出したことで政権運営は困難と判断したためである。
コンテ首相の辞表を受け取ったマッタレッラ大統領は、新たな連立に向けた協議を開始すると述べた。議会の解散権を持っているのは大統領で、各党との協議が円滑に進まない場合、解散して総選挙を実施する可能性があった。
今回、五つ星運動と民主党が連立政権を樹立することにより、ひとまず解散総選挙という事態は免れる可能性が出ていた。
とはいえ、長年政権与党を担ってきた民主党と既存政党への不満層を支持基盤に勢力を拡大してきた五つ星はある意味、水と油ともいえることで課題も多い。
イタリア左派「五つ星運動」のディマイオ党首は30日、中道左派の民主党との連立について、一連の政策課題で一致することが条件になると述べ、連立交渉で妥協しない考えを示唆した(ロイター)。
イタリアのコンテ首相が1日、五つ星運動と民主党の協議が4日までにまとまるとの見方を示した。
イタリアの10年債利回りはECBの追加緩和観測に加え、リスク回避による世界的な長期金利の低下を受けて低下基調となっていた。新政権発足に向けた協議が進展し、総選挙のリスクが後退したこともフォローとなり、まだプラスの利回りとなっているイタリアの10年債利回りは1%割れとなり、過去最低を更新した。
イタリアの政局の先行き不透明感は完全には拭えない。いずれ解散総選挙という可能性もないとはいえないものの、イタリア発の新たなリスクが生じる可能性はいまのところ大きくはない。このため、米中の貿易戦争によるリスク回避の動きなどによる影響のほうが当面大きくなることが予想され、利回りを求めてのイタリア国債への買いは続く可能性が高いとみられる。