政局不安でもイタリアの国債は買われた理由
イタリアのコンテ首相は20日、議会上院で演説し、辞意を表明した。連立政権をつくる極右「同盟」と左派「五つ星運動」の対立が激化し、同盟が内閣不信任案を提出したことで政権運営は困難と判断した(日経新聞)。
辞表を受け取ったマッタレッラ大統領は、現地時間21日から新たな連立に向けた協議を開始すると述べた。議会の解散権を持っているのは大統領で、各党との協議が円滑に進まない場合、解散して総選挙を実施する可能性がある。
イタリアの政局の行方に不透明感が強まり、総選挙の可能性も出てきた。これを受けての欧米市場ではリスク回避の動きを強めた。欧州の株式市場はロンドン株式市場も含めて総じて売られ、欧州の国債は総じて買い進まれた。
欧州の国債は総じて買い進まれた、ことにやや疑問も生じることになる。たしかに金融市場でのリスク回避といえば、株が売られ、国債は買われるというのが図式である。しかし、ことイタリア国債に関していえば、自国の政局不透明感が強まることで、これまで売られることが多かった。
リスク感応度というのは時と場所によって異なることも確かである。日本で大きな地震が起きた際に、リスク回避の円高となったことがある。これは一見おかしくみえるが、条件反射的な動きでもある。むろん日本経済がそれでも強固で日本への信認は強いとの認識が背景にあったかもしれない。
これに対してギリシャの財政不安をきっかけとした欧州の信用不安により、イタリアやスペイン、ポルトガルなどいわゆる周辺国の国債は大きく下落した。その後もイタリアの政局への懸念が生じると格下げ観測なども手伝って、イタリアの国債は売られることが多かった。
しかし、今回のイタリアの政局不安を受けても、イタリアを含めた周辺国の国債も買われていた。これはリスク回避の動きというよりも、イタリアの政局不安によって、ECBが追加緩和を行うであろう可能性を強めたからとの見方ができるかもしれない。イタリアの総選挙を回避できるのではとの見方もあったようだ。
イタリアの10年債利回りは1%の前半にまで低下している。マイナスとなっているドイツやフランスなどに比べれば高くみえるが、水準としては極めて低い。これは世界的な金利低下に巻き込まれている側面はあるが、欧州危機はすでに過去のものとなっているともいえるのかもしれない(市場の感覚が麻痺している懸念は残るが)。