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セブンペイが9月末で廃止とか、キャッシュレスキャンペーンへの影響も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 セブン&アイ・ホールディングスが、スマートフォン決済サービス「7pay(セブンペイ)」のサービスを9月末に終了することが1日明らかになった。

 7月1日から利用が始まったセブン‐イレブンの7Payにおいて不正アクセス被害が発生した。7月29日時点で合計807人、約3860万円の被害が認定されていた。

 ここにきて、セブン&アイ・ホールディングスが、グループのネット通販の共通ID「セブンiD」のパスワードを一斉にリセットしたことで混乱が広がっていたが、こういった混乱による不信は拭えず、結果としてセブンペイは2か月あまりで停止することとなったようである。

 消費税増税対策の優遇措置を見据えたタイミングを見計らって、独自のキャッシュレス化を進めようとしたあまり、最も重視すべきセキュリティへの対応が不十分であり、そこを突かれた格好となった。

 今回のセキュリティについてはいくつかの組織が関係しており、責任の所在がはっきりしていないことも問題点となっていた。これについてはフェイスブックのリブラについても同様の問題があるのではないかと思われる。

 それはさておき、今回のセブンペイの問題により、セブンペイそのものへの不信感だけでなく、スマートフォンを使ったQR決済そのものへの不信感も強めさせた可能性がある。巨額のキャンペーンを張って、やっとQRコード決済への認知が進んだ矢先であっただけに、これによる負の影響も大きいのではなかろうか。

 そもそも論として何故、経済産業省はキャッシュレスキャンペーンを進めようとしたのか。さらにはそれを消費税増税対策の優遇措置にも組み込ませたことにも疑問がある。これは何度か指摘したが、日本のキャッシュレスは決して遅れているわけではない。Suicaなどで使われているFelicaという技術はソニーが開発したものであるし、QRコード決済に使われるQRコードもデンソーが開発したものであり、両者ともに純国産である。

 我々の商取引での現金利用が多いのは確かである。そのためにATMなどの余分な費用がかさんでいるとの見方もある。しかし、我々は現金利用で特に不便や不安は感じていない。さらに交通系カードなどを利用してのキャッシュレスは普通に使っている。給与なども現金でもらっていない人がほとんどで、公共料金やアマゾン購入の代金も現金は使っていない。銀行の窓口にずいぶん足を運んでいないという人も私だけではあるまい。いったいどのキャッシュレス化が遅れているというのであろうか。

 QRコード決済は決して進んだキャッシュレス決済とは思えないし、そこにクレジットカードまで絡ませるとなれば、その分の費用負担も利用者である我々や商店が結果として負うことになる。ただし、その我々の費用負担分は消費行動の「情報」として吸い上げられようとしている。つまり現金にある匿名性を我々は犠牲にすることになる。

 いったい経済産業省はキャッシュレスキャンペーンで何をしたいのか、そもそもそういったキャンペーンが本当に必要であったのか疑問に思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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