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ECBがマイナス金利での貸し出しを検討しているとか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

  欧州中央銀行(ECB)は市中銀行を対象とした長期資金供給オペ(TLTRO)の第3弾について、ゼロ金利やマイナス金利での貸し出しを検討しているとロイターが報じた。

 長期資金供給オペ(TLTRO)とは、市中銀行に低利で長期の資金を貸し付ける条件付き長期リファイナンスオペのことで、2014年9月からECBが実施し、2016年3月には第二弾となる「TLTRO2」を導入している。

 マイナス金利での貸し出しは、中央銀行が利子を付けて金融機関に資金を供給することを意味する。ロイターによると、現行の預金金利であるマイナス0.4%で貸し出す案も浮上しているとか。

 ユーロ圏内の成長見通しが予想以上に悪化していることを踏まえた措置ともいえるものの、貸し出し金利をマイナスにすることは極めて異例のこととなる。金融機関にとってはありがたいのかもしれないが、もしこれによって金融機関にもマイナス金利での貸し出しを求められるようなことになると、むしろ悪影響ともなりかねない。

 こちらのほうが可能性があるのではとみられていた中銀預金金利の階層化については、現行のマイナス預金金利が銀行に及ぼす悪影響は軽微で、リスクの方が大きいとの見方が大勢という。現在の日銀のマイナス金利政策をもとにしたような中銀預金金利の階層化はどうやら実施されない可能性も出てきた。

 そもそも中央銀行のマイナス金利政策が経済や物価に良い効果を及ぼしているのかどうかもかなり怪しい。ここにきての欧州の景気の悪化もECBのマイナス金利政策では食い止められなかったとなれば、深掘りはさらに副作用を増幅させかねない。ECBの中銀預金金利の階層化は副作用を考慮してのものとの見方もできるが、そもそもマイナス金利政策は正しい政策であったのか。金融機関の体力を消耗させて、その分に見合う経済実態への効果は検証されているのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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