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日米欧の長期金利はどこまで低下するのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 ECBのドラギ総裁は、必要なら利上げをさらに遅らせる用意があると述べたことに加え、マイナス金利の副作用を和らげる措置を検討する方針を示した。これはつまり金融緩和策を継続させるための措置とも受け取られ、27日のドイツの10年債利回りはマイナス0.08%に低下した。このドイツの10年債利回りの低下もあって、27日の米10年債利回りも2.3%台まで低下した。そして、日本の10年債利回りも28日にマイナス0.1%に低下した。まるでドイツと日本の長期金利が競い合うように低下している。

 米国の10年債利回りは10月に3.2%台まで上昇したあと低下基調となった。米10年債利回りのチャートからは、上昇トレンドが崩れた格好となった。チャートから見ての次の節目は2.05%あたり、つまり2%が大きな壁となることが予想される。現状は上昇トレンドのスタート地点ともいえる2016年7月の1.3%台あたりまで低下することは考えづらいが、ないとも言えない。

 すでにドイツの10年債利回りはマイナス0.1%に接近している。これは2016年9月あたり以来の水準となっている。ちなみにドイツの10年債利回りは2016年7月にマイナス0.18%あたりまで低下した。

 日本の10年債利回りは、2016年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和の際に設定されたとされる長期金利のレンジ±0.1%の下限に到達した。ただし日銀は昨年7月に長期金利の許容範囲を拡大させ、±0.2%としている。これにより、マイナス0.1%は通過点との見方もできる。しかし、来年度の国債発行の減額に合わせる格好で国債買入の金額なりを修正してくる可能性はありうるか。

 チャートからみると日本の10年債利回りはマイナス0.1%という心理的な壁を突破するとなれば、2016年7月28日につけたマイナス0.29%あたりが次の節目となる。もし日本の10年債利回りがマイナス0.2%を下回ってきた際に日銀は動くのか、動くとすれば何をしてくるのか、それを市場が試しにくることも環境次第ではありうるか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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