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日銀のマイナス金利政策は速やかに止めるべき

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀の黒田総裁は11月5日の名古屋での講演において以下のように述べていた(講演要旨から引用)。

 「かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています。」

 日銀が掲げた物価目標の2%は達成されてはいない。しかし、「既にわが国は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっています。」との黒田総裁のコメント通り、デフレという状況下にはない。

 これは日銀の金融政策の大きな方向転換を示すものと見ざるを得ないと以前に書いた「日銀は異常な緩和策からの軌道修正を行うべき」とのコラムで指摘した。

 ただし、この講演後の会見では、次のようにも述べている。

 「依然として大幅な金融緩和を粘り強く続けて、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に達成しようとしていることには全く変わりはないということです。」

 つまり2%の物価目標が達成されない限り、大幅な金融緩和を粘り強く続けて行く方針、つまりは現在の政策を維持させていくことを繰り返していた。

 現在、金融街・大手町で異例の売れ行きとなっている本がある。その本は前日銀総裁の白川方明氏の著書「中央銀行」である。本来の中央銀行やその金融政策はどうあるべきなのか、金融業界の関係者を主体にあらためて見直しが入ってきており、そのひとつとしてこの総ページ数700ページを超え、本体価格4500円という本を求めているビジネスマンが多くいるということではなかろうか。

 また、マイナス金利の撤廃を提言した日銀の論文が市場に波紋を広げているという記事も日経新聞に掲載されている。政策決定と直接かかわりを持たない日銀の金融研究所が出したものだが、なぜこのタイミングでとの憶測も出ている。

 頑なな姿勢も良いが、それは頑固な姿勢とも捉えられる。すでに異次元緩和を始めて5年以上経過している。それによる副作用も次第に顕著になっている。量的・質的緩和によってGDPを超える資産を中央銀行が保有するという事態となっている。その量に限界が見えたから採ったものがマイナス金利政策と長期金利コントロールである。すでに量はこれだけ積み上がっている以上、そのストック効果を維持させることで、ついでとも言えるマイナス金利政策と長期金利コントロールは速やかに止めるべきであると考える。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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