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日銀によるETFの購入について再考の必要はないのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀はETFと呼ばれる上場投資信託を購入するかたちで日本の株式を購入している。これが決められたのは、2010年10月5日の決定会合においてであった。これは包括緩和とも呼ばれたが、資産買入等の基金を創設し、国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)など多様な金融資産の買入と固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討するとした。

 10月28日の決定会合において、指数連動型上場投資信託を0.45兆円程度、不動産投資信託を0.05兆円程度という買入限度額を設定した。11月5日には買入対象の詳細や信託銀行を受託者とする買入方式などの具体的な運用を定める買入基本要領等を決定。2010年12月から買入が開始された。

 その後日銀は金融緩和の強化として、ETFおよびJ-REITを含めて買入額を増加させてきた。2013年4月の量的・質的緩和策、いわゆる異次元緩和を決定した際には、ETFおよびJ-REITの保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入を行うとした。

 その後も追加緩和によって買入金額は増加した。現在では保有残高はそれぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入を行うとしている。

 ただし今年7月31日の決定会合では、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入額は上下に変動しうるものとするとしている。

 日銀が国債を大量に買い入れ、長期金利を抑えつけることによる弊害が債券市場の機能低下という格好で起きている。いまのところ日銀によるETFを通じた株式購入が、株式市場の機能低下を招くといった弊害は目に見えるかたちではおきてはいない。しかし、株式市場における日銀依存度が高まっていることは確かであり、適正な価格形成という市場機能にも影響を与えている。

 実質的に日銀が筆頭株主になっているような企業も多い(実際には筆頭株主に日銀の名前が出てくることはない)。さらにETFを日銀が購入する際に組成した金融機関に支払う手数料なども一部で問題視されている。

 そもそも日銀がETFを通じて、2%の物価上昇をもたらす経路が良くわからず、追加緩和という名目で買入金額だけが増加されていることに疑問はなかったのか。市場への影響がこれ以上大きくなる前に日銀によるETFなどの買入についても再考する必要があるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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