Yahoo!ニュース

再び過疎化が進む債券村

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 8月27日の債券先物の日中値幅はわずかに3銭となってしまい、6月28日以来の過去最低値幅となってしまった。この日は月曜日ということもあったのかもしれない。それでもこの日の日経平均は200円を超す上昇となるなど、夏休みモードからは脱していたにもかかわらず、7月31日の日銀の政策微調整以前の相場に逆戻りしてしまった感がある。

 28日の債券先物の値幅は5銭。現物債は2年、5年、40年債カレントの出合いが日本相互証券で15時現在でなかった。

 29日の債券先物の値幅は4銭。高値150円45銭をつけたのは8時45分10秒、安値の150円41銭をつけたのは8時45分30秒だったそうで、寄付き後30秒でできたレンジが当日レンジとなってしまった。この日も現物債は2年、5年、40年債カレントの出合いが日本相互証券で15時現在でなかった。この日の10年債は7月4日以来のカレントの出合いなしとなった。この日、日本相互証券で出合ったカレントは20年債と30年債だけとなってしまった。

 日銀は7月31日の金融政策決定会合で、長期金利の操作目標をそれまでの±0.1%から±0.2%に引き上げたとされる。8月2日に10年債の利回りで0.145%まで上昇したタイミングで、日銀は指し値ではなく通常のオペながら予定にない臨時オペをオファーした。これを受けて10年債は売りづらくなるとともに、米債が買われていたこともあり、そこから利回りはむしろ低下した。

 しかし、買い方も次第に慎重となっていたこともあり、債券市場は再び膠着相場に戻ってしまった。日銀の大規模な国債買入が続いていることも国債の需給をタイトにさせており、それも膠着感を強める要因となっている。

 日銀は多少の柔軟化を決定したものの、タイトルを「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」にし、政策金利のフォワードガイダンスを導入するなど、緩和後退とは見せない工夫もしたが、それも一層売り方を慎重にさせている面もあろう。

 債券村の過疎化は日銀の長短金利操作付き量的質的緩和政策そのものの方針を大きく変えない限り、続く可能性がある。いったんシャッター街となってしまった駅前の復活は難しいように、過疎化してしまった債券村に人がいなくなってしまうリスクは継続する。ただし、その村が支えているはずの債券市場は世界第二位の規模を誇っているのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事