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今後の原油価格の動向にも注意が必要に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領はホワイトハウスで安全保障政策を担当するマクマスター大統領補佐官を交代させ、後任にボルトン元国連大使を起用するとツイッターで明らかにした。国家安全保障担当の米大統領補佐官としてマクマスター氏の後任に指名されたジョン・ボルトン元国連大使は、外交政策のタカ派で知られている。

 「北朝鮮の核兵器が突き付ける現在の必要性に対し、米国が先制攻撃で対応するのは完全に正当」と発言するなどしており、北朝鮮に対し厳しい姿勢を示す保守強硬派として知られているボルトン氏の大統領補佐官の起用により、北朝鮮との首脳会談を前にして、トランプ政権が北朝鮮に対して厳しい姿勢で臨む構えを示した格好となった。

 ボルトン元国連大使は2015年に「イランの爆弾を止めるには、イランを爆撃せよ」と題した論説をニューヨーク・タイムズに寄稿するなど、イランに対する強硬派としても知られている。

 そのボルトン氏の安全保障政策を担当する大統領補佐官への起用により、対イラン制裁が再び導入されるとの観測から23日の原油先物は大きく上昇した。WTI先物5月限は前日比1.58ドル高の65.88ドルに上昇した。中東の地政学的リスクが意識されたものとみられる。

 また、サウジアラビア軍は25日、隣国イエメンから撃ち込まれたミサイル7発を迎撃したと発表した。このミサイルについて、イエメンを拠点としサウジと敵対するイランと関係が近い武装組織「フーシ派」が発射したとしており、今後緊張が高まる懸念がある。

 米国とイランの緊張関係が今後高まるのかどうかについても注意する必要はあるが、原油先物がひとつの節目とされる66ドル台にすでに乗せてきていることにも注意したい。

 原油価格についてはそもそも価格下落を危惧した石油輸出国機構(OPEC)諸国とロシアなどが昨年初めから協調して減産したことに加え、世界的な景気拡大による需要増も相まって反発基調が続いている。

 協調減産は果たしてこのまま続けられるのか、原油価格の回復に伴って米国の原油生産量が大幅に増えていることで、価格が抑えられるのではとの見方がある。

 しかしWTIのチャートからみると、この66ドル近辺の水準を大きく突破してくるとなれば、さらに戻りを試してくることが予想される。

 WTIは2014年7月から2015年1月あたりにかけて急落し、その急落相場から立ち直りかけているところである。チャート上からはWTIは66ドルあたりを上抜けると100ドルあたりまで節目らしい節目はない。

 世界的な景気拡大と言っても、WTIが100ドル台になるほど原油の需要が増加しているようには見えないし、さすがにそこまでの上昇を見込む向きは少ないと思われる。それでもひとつの可能性としてみておく必要があるかもしれない。そうなれば日本の消費者物価にも直接的な影響を与える可能性がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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