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日銀のイールドカーブコントロール政策の修正はあるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日銀の中曽副総裁は2017年10月18日の講演で次のような発言をしていた。

 「日本銀行では、均衡金利の概念を拡張して「均衡イールドカーブ」を計測し、過去の緩和局面と比較するなど、様々な角度から理論的・実証的な分析を進めています。なお研究途上の課題も少なくありませんが、こうした分析の成果も活用しながら、先行き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、必要であればイールドカーブの形状についても調整を行っていく方針です。」

 日銀のイールドカーブコントロールは、国債の買入によって調整されている。「より少額の国債買入れによって、同じ金利水準を実現できること」も可能との認識により、結果として国債買入額を減少させている。

 さらに中曽副総裁は「日本銀行は、イールドカーブ全般にわたって、様々な期間別の国債買入れを行ってきたほか、特定の金利水準で無制限に国債を買い入れる「指値オペ」という強力な補完的ツールも備えています。」と指摘している。

 日銀が今後、物価の上昇や景気の拡大、さらには米国の長期金利の上昇などを受けて、何かしらの調整を行うとすれば、このイールドカーブコントロール政策の修正がありうる。

 本来であれば民間金融機関の収益を圧迫するマイナス金利政策を修正すべきと考えているが、日銀として軸足そのものは変えたくはないようである。しかし、中曽副総裁発言からは、経済・物価・金融情勢に応じて、イールドカーブを修正する事は想定しているようである。

 出口政策というのではなく、あくまで調整というかたちで、短期ではなく長期の利回り水準を引き上げてくる可能性がある。もし調整するとすればどのような形式となるのか。

 日銀の10年物国債金利の操作目標は「ゼロ%程度」としているが、これまでのオペレーション等からみて、マイナス0.1%からプラス0.1%あたりとなろう。上限はこれまでの指し値オペからみて0.11%か。もし10年物国債金利の操作目標をやや上方シフトさせるとなれば、10年債利回りが0.11%を超えても指し値オペを入れずに、0.2%あたりで指し値オペを入れてブレーキを掛けるという手段を取ることも考えられる。その前に5年超10年以下の国債買入額そのものを減額し、コントロールする可能性を示すこともありうるか。

 ただし、1月9日の国債買入において、超長期ゾーンの国債買入額を減額した際に債券市場は反応薄であったものの、ドル円が50銭程度下落するなど、他市場がやや過剰反応を示した。このあたりも意識して行わないと、イールドカーブコントロール政策そのものの修正はなかなか難しいものとなる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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