日銀はサプライズ緩和政策からの方針変更か

(写真:つのだよしお/アフロ)

 11月9日に日銀は金融政策決定会合における主な意見(10月30・31日分)を公表した。このなかの「金融政策運営に関する意見」のところを確認してみたい。

 「現在の強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが重要」、「金融市場調節方針を維持することにより」、「現在の金融政策は・・・政策効果の不確実性が最も小さく、最適な金融政策である」

 決定会合では現状維持が賛成多数で決定されていたため、現状維持が適切であるとする意見が出るのは当然ではあるが、物価目標達成にはかなりの距離はあるものの、それによって追加緩和を行う必要性はないと主張しているようにも思われる。意見のなかには次のようなコメントもあった。

 「政策変更の効果に確信が持てない限り、現状維持が適切である」。「目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると、金融不均衡の蓄積や金融仲介機能の低下といった副作用が生じる恐れもある」。「追加緩和に関しては、市場や金融機関への影響、政策の持続性等の観点から、プラスの効果より副作用の方が大きいとみている」、「国債市場の流動性に加え、国内外投資家の動向や金融機関の保有有価証券ポートフォリオの中身について一層注視する必要がある 」

 どうやら副作用についてもかなり気配りをしているようにも思われる。「目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると」との表現があったが、2013年4月の量的・質的緩和、2014年10月の量的・質的緩和の拡大、2016年1月のマイナス金利付き量的・質的緩和、同年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和は、ある意味、目標達成を急ぐあまり取った極端な政策のようにも思えるのだが、日銀はそのようにサプライズ緩和政策から方針を変えてきているようにも思われる。

 しかし、なかには何を言っているのかわからない意見も出ている。

 「米欧の中央銀行が出口に向かっているので、日本銀行も同様に出口に向かうべきだという意見があるが、これらの国に比べて、金融緩和の開始時期が遅いため、出口に向かう時期が遅くなることについても不思議はない。」

 当たり前だが、日銀の緩和策は2013年4月の量的・質的緩和に始まったものではない。それまでの日銀の緩和策は緩和策とは言えないと言うのであろうか。

 米欧の中央銀行が出口に向かっているのは何故なのか。それは世界的な金融経済リスクの後退とそれによる世界経済の回復が要因のはず。そもそも金融緩和の開始時期の違いがあったとは思えず、日本だけ景気回復に取り残されているわけではない。むろんそれぞれの中央銀行は横並びに動く必要はなく、自国の経済物価状況に応じて行うものである。しかし、無理な物価目標を立ててしまって身動きを取れなくしてしまい、表立っては出口に向きを変えることすらできないのが現在の日銀の姿ではなかろうか。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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