Yahoo!ニュース

7月の中期ゾーンの国債売買高は2004年以降の最低水準に、ディーラーが大幅縮小

久保田博幸金融アナリスト
日本証券業協会のデータを基に作成

 8月20日に日本証券業協会は7月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスが買い越し

単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -799(-1413、-703、1905)

地方銀行 -1825(31、-630、180)

信託銀行 -1902(-664、-2278、685)

農林系金融機関 -2716(-2239、70、-30)

第二地銀協加盟行 -1668(-315、-886、0)

信用金庫 -2920(-475、-880、30)

その他金融機関 -1414(-17、-413、-225)

生保・損保 -2973(-2549、-92、66)

投資信託 136(115、372、-293)

官公庁共済組合 -283(-62、0、0)

事業法人 -515(-16、-4、0)

その他法人 -966(-217、-50、103)

外国人 -7394(353、-411、-7001)

個人 191(1、26、3)

その他 23165(12863、-5406、19687)

債券ディーラー -277(-225、-301、288)

 7月の国債の投資家別売買高をみると投資信託、個人、その他を除いて総じて買い越しとなっていた。

 都銀は799億円の買い越し。6月は2兆2512億円と大幅買い越しと2年7か月ぶりの水準となっていたが、7月の買越額は大きく減少した。

 海外投資家は買い越しではあったものの7394億円の買い越しに止まり、6月の7993億円の買い越しに続いて1兆円を割り込んでいる。期間別にみると海外投資家は昨年10月以来の超長期債の売り越しともなっていた。  7月に入っての債券相場は、ECBの緩和バイアス解除が意識されて10年債利回りは0.105%と日銀の長期金利の誘導目標を試す動きとなった。日銀はこれに対し10年債の0.110%の水準で指し値オペを実施した。これ以降の債券先物はじりじりと戻りを試すような展開となったが、商いそのものは多くはなかった。

 下記のデータをみると投資家全体の商いはそれほど落ち込んではいないが、中期ゾーンの国債売買高は35兆円弱となっており、これは証券業協会のデータ(2004年4月)以降では過去最低水準となっている。海外投資家の中期ゾーンの売買減少も影響していたとみられるが、海外投資家による中期ゾーンの7月の売買高は6月に比べて8966億円の減少にすぎなかった。ところが全体では21兆5365億円も前月から減少していた。これを部門別で確認してみたところ、証券会社などの「債券ディーラー」の売買高の落ち込みが反映されていたのである。

投資家全体の売買状況

全体     超長期   長期   中期

1月1996647、303116、412877、588101

2月1958526、340593、481039、496524

3月2041609、385293、472883、558183

4月1914346、373287、391855、488680

5月1707093、320073、345208、435486

6月2124250、448132、436196、565359

7月1741728、379807、439950、349994

海外投資家の売買状況(マイナスは買い越し)

差し引き売買高、(超長期、長期、中期)、国債売買高、うち中期

2016年

4月-36565(328、-9142、-27271)、294983、62513

5月-16775(1347、-6186、-10933)、246889、34315

6月-36565(328、-9142、-27271)、344055、65055

7月-16693(1860、-4453、-13200)、275366、61036

8月-16838(-1108、-5390、-9702)、302397、65718

9月-27674(-3320、-4283、-19310)、380542、102124

10月-5717(1051、-5636、166)、264616、62534

11月-11672(2275、-2448、-10674)、302551、48912

12月-26198(-970、2054、-26261)、317612、57609

2017年

1月-23784(-1153、-504、-19500)、294839、61994

2月-11210(-2687、3009、-10323)、292813、51127

3月-17190(-4603、1222、-12886)、312730、58810

4月-21075(-3562、-4623、-11957)、321272、43951

5月-19887(-803、-6541、-11738)、269888、47170

6月-7993(-3809、557、-3745)、286134、45447

7月-7394(353、-411、-7001)、254981、36481

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事