9月の米利上げの可能性は意外に高い?

(写真:ロイター/アフロ)

7月26、27日に開催されたFOMCでは政策金利の据え置きを決定した。6月のFOMCでは予想されていた利上げを見送ったが、この際には海外情勢の不透明性が大きいとし、英国の欧州連合離脱(ブレグジット)問題では、国民投票の結果が将来の政策を決定する上で考慮する要因となると指摘した。つまり6月に利上げが見送られた背景としては。英国の国民投票を控えて市場がリスク回避のような動きを強めていたことが挙げられよう。

その警戒されていた6月23日の英国の国民投票により、英国のEUからの離脱が決まった。開票時間に市場が開いていた東京市場では、日経平均が1000円以上も下落し、ドル円は一時99円台まで下落するなど、ややパニック的な動きとなった。しかし、このようなパニック的な動きは一時的なものとなり、その後の米国の株式市場ではダウ平均やS&P500が過去最高値を更新するなど金融市場はしっかりしている。世界の金融経済に与える影響は比較的限定的なものとなった。

今回は6月に賛成に回ったカンザスシティー連銀のジョージ総裁が再び利上げを主張して反対に回ったが、ほかのメンバーは現状維持に賛成した。現実に英国のEU離脱が決定したこともあり、もう少し様子をみようとしたもののではなかろうか。

会合後に発表された声明文では、労働市場が力強さを増し、経済活動が緩やかな速度で拡大していることを示していると指摘した。雇用の伸びについては5月は弱かったが、6月は力強かったとしている。また、景気見通しへの短期的リスクは弱まってきたと指摘した。

7月の利上げが見送られた背景には、慎重になった面とともに、議長会見のある会合での決定も意識されたのではなかろうか。これにより9月のFOMCでの利上げの可能性が高まったとみているが、いくつか注意すべき事柄がある。

むろん経済物価動向、特に雇用統計などの経済指標なども重要であるが、それとともに8月25~27日にカンザスシティー連銀が開く経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でイエレン議長の講演が予定されていることである。過去、金融政策の変更の可能性のある前といったタイミングでは欠席するケースもあった。今年は6月に利上げを決定して少し余裕をもってジャクソンホールで講演とのスケジュールのはずが、英国のために予定が狂った可能性もありうる。急な欠席はないと思うが、このジャクソンホールのイエレン議長の講演も注目となる。

そしてもうひとつ大きなイベントが米国で控えている。11月の米大統領選挙である。FRBは中立の立場となるものの、当然ながら無視はできない。共和党候補のトランプ氏は大統領となった際にはFRB議長を交代させるとも言っている。言うことを聞く人物を中央銀行の執行部としてとして送り込むというのは、どこかの国でもあった気がするが、それはさておき、そんな政治の干渉を受ける前にイエレン議長は正常化を進めたいのではないかとも思われるのである。そんな意味からも7月のFRBの利上げの可能性は意外に高いのではないかとみている。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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