Yahoo!ニュース

ドイツの長期金利がマイナスに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

マイナス長期金利倶楽部にドイツも加入した。6月14日の欧州債券市場では、英国のEU離脱への懸念の強まりからリスク回避の動きをさらに強めた。この結果、ほぼゼロ近くまで低下していたドイツの10年債利回りはゼロを突破し、一時マイナス0.033%まで低下した。ドイツの10年国債利回り、つまり長期金利がマイナスとなったのは初めてである。

長期金利のマイナス倶楽部の先駆者はスイスである。2015年1月15日のスイス国立銀行がスイスフランの上昇を食い止めるために設定した対ユーロの為替レートの上限を撤廃し、超過準備に適用する金利をマイナス0.25%からマイナス0.75%とするなど利下げを実施したことも影響し、10年債の利回りまでマイナスとなったのである。現在ではスイスの国債は残存20年以上の利回りまでもがマイナスとなっている。

その後、日銀が今年1月29日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を導入したことにより、日本の10年債利回りも低下を続け、2月9日に初めて日本の10年債利回り、つまり長期金利がマイナスとなった。その長期金利は6月15日にマイナス0.195%まで低下した。日本の国債は残存15年あたりまでマイナスとなっている。

現在、いわゆる長期金利がマイナスとなっているのはスイス、日本、そしてドイツだけとなる。しかし、中央銀行でマイナス金利政策を導入しているのはスイス国立銀行、ECBと日銀の他に、スウェーデンの中央銀行であるリクスバンクとデンマーク中銀、そしてハンガリーの中央銀行であるハンガリー国立銀行がある。

念のため、スウェーデンとデンマーク、ハンガリーの10年債利回りを確認したところ、この3か国はまだ利回りはプラスとなっている。しかし、デンマークの国債利回りは5年あたりまでマイナスとなるなどしており、マイナス長期金利倶楽部への加盟も時間の問題となるかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事