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実務者会合の目的は為替の協議か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

金融庁、財務省、日銀は2日の午前、世界的に金融・資本市場が変動している現状に関して意見交換したそうである。会合に出席したのは金融庁の森信親長官、河野正道金融国際審議官、財務省の浅川雅嗣財務官、太田充総括審議官、日銀の雨宮正佳理事、門間一夫理事の6人(ロイター)。

この日の会合は第1回との位置付けで、都内で1時間程度、意見交換したとか。具体的な議論の内容は明らかにされていないが、政策当局がより緊密に連携することが狙いであり、市場動向に応じて今後も月次で開催するそうである。

これに関して菅義偉官房長官は2日午後の記者会見で、同日午前に金融庁と財務省、日銀の幹部が金融資本市場に関して意見交換したことを巡り、「必要であれば適切に対応できるように、より緊密な連携を目的に実施した」と説明した。その上で、当局間で「情報交換を強化しながら、国際社会と連携して市場の動きを注視する」と述べた(日経新聞電子版)。

なぜこのタイミングで金融市場に関する実務者のトップレベルでの会合が持たれたのであろうか。かなりの豪華メンバーであることは確かであり、ひとつには日本で5月に開催されるサミットを睨んでのものとの見方もできよう。しかし、このメンバーを見る限り別な要因が働いた可能性がある。

金融庁からの出席者が長官と金融国際審議官であり、財務省からは財務官となれば金融市場のなかでも特に外国為替市場に関する議論が中心ではなかったかと推測される。たとえばこれが国債に関するものであったのであれば理財局から出席者が出たはずである。

日銀からの出席者は異次元緩和の生みの親ともいえる企画担当の雨宮正佳理事であり、その異次元緩和の大きな目的のひとつが円安であったことを考慮すると雨宮理事の出席は納得できる。そして、門間理事の担当は国際局、国際関係統括である。

柴山昌彦首相補佐官は2日にロイターとのインタビューの中で、2月26~27日に中国・上海で開かれたG20では、日本の金融政策の手を縛るような議論はなかったとの見解を示し(ロイター)、また財務省の浅川財務官も時事通信に対し、2月に中国・上海で開かれたG20について、「円の議論は全くなかった」と語っている。デイセルブルム議長(オランダ財務相)が、人民元に加えて「日本円も議論された」と発言したと報道に対して浅川財務官は、こうした報道を明確に否定した。また、デイセルブルム議長も「誤った引用だ」と釈明したそうである(時事通信)。

しかし、このタイミングで日本の為替政策を巡って何かしら協議が必要になったことは確かなのではなかろうか。為替市場に影響を与える日銀の追加緩和策や財務省による為替介入などに関して意見交換し、これに対する米国の動向などもあらためて確認した可能性もある。さらに市場そのものが日銀の追加緩和などに対してポジティブな反応をしなくなったことの要因なども議論されたのかもしれない。ただし、これらはすべて私の憶測に過ぎないことも確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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