世界的な金融市場の混乱の原因と今後
2016年に入ってから世界の金融市場は急速にリスク回避の動きを強めた。東京株式市場で日経平均は昨年末の19000円台から1月21日に一時16000円近くまで下落した。1月4日の大発会から25日までの15営業日のうち日経平均が前日比プラスとなったのは13日、19日、22日25日の4日だけとなった。
この間に円高も進んでおり、ドル円は年初の120円台から116円近辺に下落した。外為市場では人民元とともに資源国を中心に新興国の通貨が下落した。新興国通貨のチャートをみると2015年7月あたりを目先のピークにしてダウントレンドを形成していたものが多い。これはWTIの下落がスタートした時期とも重なり、原油価格の下落に影響された面があるとともに、市場を取り巻く資金の流れが変化して原油とともに新興国通貨が下落したとも言える。
ただし、日経平均やダウ平均のチャートをみるとこれらのダウントレンドは前述のように今年に入ってから形成されている。ドル円については昨年11月から12月にかけて目先の天井が形成され、12月10日あたりからダウントレンドが形成されている。
チャートをみると原油価格とともに新興国通貨の下落は、昨年7月あたりからスタートしていた。原油価格の下落については供給面の方に焦点があたっていたが、それよりも新興国経済の減速にともなう需要面の後退が影響していたと言えるのではなかろうか。
もちろんここで忘れていけないのが米国の利上げである。FRBのテーパリングは2014年10月に終了した。その後FRBは時間を掛けて利上げのタイミングを探り、2015年12月に利上げを決定した。ECBや日銀は大量の国債買入を継続してはいるが、FRBの正常化に向けた動きは過剰流動性に依存しすぎていたともいえる世界の金融市場の流れを変化させ、それがリスク回避の動きとなり、新興国の通貨を下落させ、原油価格を下落させたと言える。
これには中国の景気減速などが顕著となったことも大きく影響し、8月11日の人民元の切り下げ以降、リスク回避の動きに拍車を掛けた。ここに米利上げも重なり、2016年に入っての日米欧の株式指数の急落に繋がったと言える。
年初からの急速な日米欧の株式指数などの下落は21日あたりでいった止まった格好になった。そのきっかけのひとつが原油先物の反発で、中心限月移行のタイミングで21日に新たに期近となった3月限が30ドル台を回復し、ここからリスク回避の動きの反動が起きた。また、21日にはECB理事会が開催され、ドラギ総裁は会見で次回会合での金融政策の見直しの可能性に言及したことも反動のきっかけとなった。ここに日銀の追加緩和期待も加わって日経平均は21日の16000円近辺から25日に17000円台を回復した。果たしてここで目先の底を打ったと言えるのであろうか。
たしかに原油先物はWTIが30ドルを割り込んできたことで目先の達成感は出ている。東京株式市場の動きをみても今回の反発はヘッジファンドなどのショートカバーが原動力と思われる。その意味ではひと相場終わった感はある。しかし、テクニカル的な買い戻しであった可能性も高い。25日には原油先物は大きく下落し、WTIは新しい限月で30ドルを割り込んできた。今度は日米欧の中央銀行の金融政策の動向を見て、あらためてトレンドが形成されるのではいかと思われる。
FRBの年内利上げについては4回は難しいとの見方も出ており、念1回か2回ではないかと予想されている。少なくとも1月のFOMCでの利上げはないと思われる。イエレン議長の議会証言などを確認し、今後のFRBの利上げに対する認識が変化しているのかが注目されよう。利上げに対して慎重な見方となれば、これはリスクオンの動きを強める可能性がある。ただし、注意すべきは日銀とECBである。追加緩和への期待感は強まろうがその手段は限られており、仮に追加緩和を決定したとしてもそれを市場ではネガティブに捉える懸念がある。リスク回避の動きを強めさせることもありうるため注意したい。