長期金利が過去最低の0.190%を付けた場面
2016年1月14日の東京株式市場は大荒れの展開となっていた。日経平均は年初の1月4日の大発会から12日にかけて6営業日続落となったが、これは戦後初の事態となった。その下落が13日でいったんストップした。ドル円が118円台を回復したこともあり、13日の日経平均は496円高で引けた。ここでいったん調整は終了かとの期待も出ていたところに、13日の米国株式市場ではダウ平均が364ドル安と再び大きく下落したことで、14日の東京株式市場は売りが先行し、日経平均は前日比700円を超す下げとなったのである。
日本の債券市場は、中国経済の減速やそれにも影響を受けた原油先物の下落などによるリスク回避の動きの強まりで、債券先物は連日の最高値更新となっていた。ところが10年債については2015年1月20日につけた過去最低利回りの0.195%には届かなかった。しかし、それでも10年341回債の利回りはじりじりと低下して0.200%に迫ってきていた。
1月14日の前場に10年債利回りは0.200%に低下した。日経平均はかろうじて17000円割れを回避していた。ところが後場に入り、日経平均先物主体に仕掛け的な売りが入ったものとみられ、13時半過ぎに日経平均そのものも17000円割れとなった。ドル円も売り込まれ、117円30銭近辺に下落した。同じようなタイミングで債券先物は買い進まれて、149円66銭まで上昇し、10年債利回りは0.195%をつけ、さらに0.190%が買われたのである。こうして日本の長期金利は過去最低を更新した。
この場合の現物債の動きとは日本相互証券(BB)での値動きとなるが、実は10年債の0.190%の商いはBBでの取引の最小ロットの5億円しかなかった。つまり、0.190%を付けに行った人が一人だけいたということになる。たしかにこれまで最高値や最安値を更新する際は果敢に付けに行く人は存在していた。それはさておき、問題はそのあとの動きである。
日経平均の17000円割れは一時的で、その後押し目買いが入り、下げ幅を大きく縮小させた。ドル円も117円30銭あたりから118円30銭あたりへと1円近くも上昇した。奇妙であったのは、債券先物は149円66銭の高値を付け、10年債利回りが0.190%をつけたあとに、こちらは急落していたことである。
株が買われたので債券が売られても不思議ではない、と思われるかもしれないが、日経平均先物と債券先物はそれほど相関が高いわけではない。たしかに円高株安債券高がセットになっているようにみられるが、常にそのように動くわけではない。たとえば13日は日経平均も債券先物も買われていた。
さらに奇妙な点は、債券先物の値幅の大きさである。ここにきて10銭から20銭程度の日中値幅であったのが、14日は商いをともなって31銭も動いていた。そして現物債も10年債は0.190%から0.225%に後退し、20年債にいたっては0.900%から0.950%と大きく下落していたのである。
つまり14日の株と為替と債券の動きには何かしらの連動性がみられ、仕掛け的な動きが入っていた可能性が高い。日経平均の17000円割れと10年債の0.190%を試して、そのタイミングでまとまった反対売買が控えていたと思われる。
債券に関しては超長期債の利回り上昇幅が大きかったことで、そこそこまとまった利益確定売りが超長期債を主体に持ち込まれた可能性がある。
日経平均の17000円近辺(9月29日の16901円49銭)は昨年9月末につけた安値でもある。ここを大きく下回ると次のポイントは15000円あたりとなる。そこまでの下落はどうしても止めたいとの意向が働いた可能性もある。その際に現物の超長期債を売却していたとすれば、自ずと仕掛け人も見え隠れする。ポートフォリオで債券の比率を低めた一方でデュレーションを長め、つまり中短期債から超長期債に乗り換えていた大手投資家が存在している。むろん海外ヘッジファンドも動いていた可能性もあり、たまたま動きが重なったとの見方もできるかもしれない。しかし、日経平均の17000円近辺が絶対防衛ラインとして意識されていた可能性もありうるのではなかろうか。