米利上げは12月が濃厚に
10月27日から28日にかけて開かれたFOMCでは9対1で現状の金融政策を維持することを決定した。反対したのはリッチモンド連銀のラッカー総裁で今回も0.25ポイントの利上げを主張した。
ダニエル・タルーロ理事やラエル・ブレイナード理事から年内の利上げに対して懐疑的な発言が出ていたことで、注目された声明文であったが、むしろ12月の利上げに向けてさらに一歩進めたような内容となっていた。
声明文で注目されたのは、9月の声明にあった「最近の世界的な経済・金融情勢は経済活動をやや抑制する可能性があり、近い期間にインフレ下方圧力におりうる」との文言が削除されたことである。
ブレイナード理事は10月12日に、世界経済の減速や中国での混乱など国際リスクが米経済の足かせとならないことが明確になるまでFRBは利上げを見送るべきとの考えを示していた。
しかし、その中国発の混乱はひとまず収まったかに思える。米国の正常化路線に対してそれほど大きな足かせとはならないとの判断も働いたのか、利上げ観測を後退させた要因ともなったものをとりあえず排除させた格好となった。
さらに、前回までは特定の会合についての言及はなかったものの、今回の声明文では次回12月の会合で政策金利引き上げを検討すると表明していた。
これらの声明文の内容からみて、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁などを含めて、理事などからもやや慎重論が出ていたが、予定通りに12月のFOMCでの利上げ、つまり正常化を決定してくる可能性が強まったといえる。
ただし、前回から今回の会合の間に別の変化があったことも要注意事項となる。これはECBが12月15日から16日にかけてのFOMCの前に、ECBが12月3日の理事会で追加緩和を決定する可能性が強まったことである。FOMCの利上げについては、まだやや曖昧な表現が残されているものの、ECBについてはドラギ総裁が追加緩和を示唆している。また、日銀も追加緩和に向けた議論を始める可能性も出ている。
2014年10月の日銀の異次元緩和第二弾はFRBのテーパリングの終了のタイミングに合わせるような格好となったため、急速に円安ドル高が進行した。ECBとしても今回の追加緩和の狙いもユーロ安にあるとみられ、このタイミングを狙った可能性がある。FRBとしては過度な為替市場の動きは避けたいとみられ、米国政府も巻き込んで12月に向けて緊張が高まる可能性がある。
いずにしてもFRBは2013年のテーパリング開始の決定時と同様に時間を掛けて市場に浸透させた上で、予定通りに12月のFOMCで利上げを決定してくるものと予想される。