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8月も海外投資家の日本国債の大量買い越し続く

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

日本証券業協会(JSDA)は9月24日に8月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

8月の公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスは買い越し、単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行-8384(-1926、-9679、3213)

地方銀行 4838(-448、4202、1527)

信託銀行 3120(-1755、1117、2787)

農林系金融機関 139(-257、577、10)

第二地銀協加盟行-244(-147、311、76)

信用金庫 1912(178、1985、66)

その他金融機関 5682(147、168、5499)

生保・損保-5542(-3283、217、-1714)

投資信託-516(-169、838、-1037)

官公庁共済組合 83(10、213、150)

事業法人-739(-10、-33、-560)

その他法人-488(31、90、-67)

外国人-24121(-3161。-10672、-10219)

個人 349(14、33、10)

その他 12672(11486、6406、-1842)

債券ディーラー 88(12、54、17)

8月に都銀は8384億円の買い越しとなった。7月は8374億円の売り越しとなっていたが、2か月ぶりの買い越しに。同時に公表された国債投資家別売買高でみると、都銀は超長期債を1926億円、長期債を9679億円買い越し、中期債を3213億円売り越していた。

引き続き注目すべきは外国人で、8月は2兆4121億円の買い越しと7月の2兆4888億円の買い越しと同様に大きく買い越した。外国人は14か月連続の買い越しとなる。超長期債を3161億円、長期債を1兆672億円、中期債を1兆219億円、それぞれ買い越していた。

生損保が5542億円と超長期主体に買い越していたのを除くと、ほかの投資家は売り越しが目立った。

地銀は4838億円と長期主体の売り越し。信託銀行も3120億円と中期債主体の売り越し。そして、今回も「その他」が1兆2672億円売り越していた。7月は2兆1429億円の売り越しとなっていたため、売り越しの金額そのものは減少していた。超長期債を1兆1486億円、長期債を6406億円売り越し、ただし中期債は1842億円買い越していた。7月も超長期債を大量に売り越していたが、かんぽ生命による売りであろうか。いずれにしてもある主体が日本国債を売却し、その分、米国債などを購入していた可能性がある。

8月の債券市場は、中国だけでなく世界経済の先行き不透明感が強まり、10年債利回りは0.4%割れ、債券先物は4月30日以来となる148円台を回復した。日経平均株価は8月19日あたりから急落し、18000円割れてからは乱高下するなど波乱含みの展開に。リスク回避の動きから米債は買われ、円債もジリ高となるものの、10年債の0.3%前半では高値警戒も強まった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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