Yahoo!ニュース

バルファキス財務相が突然の辞任、何があったのか

久保田博幸金融アナリスト

ギリシャのバルファキス財務相が6日に辞任をツイッターなどで発表した。これを受けて市場では、ユーロが買い戻され、株式市場も買い戻しの要因となった。なぜ金融市場はこのような動きを示したのか。そもそもこのタイミングでの突然の辞任はどうしてなのか。

バルファキス財務相は声明で、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の一部メンバーが同氏の参加を望んでいないとし「(自身が辞任すれば)交渉がまとまりやすくなると首相が判断した」と説明した(ロイター)。

バルファキス財務相は型破りなファッションなどで注目を浴びていたが、それよりも強気な発言が問題視されていた。バルファキス財務相は先週、債権団は脅しによって緊縮策の受け入れを迫っており、ギリシャ国民に対する「テロ行為」だと非難した。

ケンブリッジ大学で経済学の教授をしていた経歴があり、ゲーム理論の専門家でもあるバルファキス財務相ではあったが、恐そうなのはどうもルックスだけではなかったようである。

ユーロ圏財務相会合でのバルファキス財務相の写真は笑顔で写っているものが多かったようだが、ドイツのショイブレ財務相らと公然と対決していたようで、交渉再開にむけてショイブレ財務相らのメンバーが同氏の参加を望まず、チプラス首相が辞任を勧めたたものと思われる。

ギリシャでは辞任を表明したバルファキス財務相の後任にユークリッド・ツァカロトス氏が指名された。ツァカロトス氏はオックスフォード大学で学んだこちらも経済学者で、これまで外務副大臣を務め、欧州連合(EU)とIMFとの交渉チームを率いてきた。オランダ・ロッテルダム生まれで、オックスフォード大学で教育を受け、1990年から1993年にはケント大学で経済学を教え、その後、アテネに移住したそうである(AFPBB News)。

ツァカロトス氏もノーネクタイ派のようだが、少なくともバルファキス氏よりは穏健派のようである。ギリシャの財務相が変わったところで協議が進展するわけではないが、少なくとも協議再開の支障がひとつ取り除かれた。マーケットはこれを好材料として判断したものとみられる。問題は今後の協議の行方となるが、いまのところ進展があるのかどうかは定かではない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事