ドイツにできて日本はできない財政再建
7月3日付けの日経新聞によると、ドイツが2015年に財政均衡を実現し、赤字国債の発行を46年ぶりに停止する見通しとなったそうである。このため赤字国債は今年に65億ユーロを発行するのを最後に姿を消すとされる。さらに債務そのものの削減も進め、直近まで80%だったGDP比の債務残高は2017年に70%を割り込む予想となっている。
2014年のドイツの実質成長率は2%に達し、10%を超えていた失業率は5%台と域内の最低水準に下がった。2018年までの4年間で税収が16%も伸びる見込みとなっているが、これはあくまで小さく見積もっても、だそうである。
まさにアベノミクス的な景気や雇用の回復であるが、もちろんこれは日銀の異次元緩和による影響では当然ない。ドイツは積極的に財政健全化を進めることで、ドイツそのものやユーロの信認を強めることになる。
ユーロが成立する過程においては、参加国に財政規律が求められた。しかし、ユーロ参加国であったギリシャが財政状態を不正に隠蔽していたことが発覚し、2010年にギリシャ発のユーロ危機が発生した。このためユーロ圏ではより厳格な財政規律を確保することが求められた。さらにECBの積極的な金融緩和策も手伝い、ユーロの信用危機は去りつつある。しかし、ユーロ圏全体としては景気回復の足取りは鈍く、そのなかでいち早く景気が回復していたドイツにとっては、非常に好環境となり景気の回復とともに、財政再建もいち早く進む格好となった。
これに比べて、やはりユーロ圏の信用危機の後退による恩恵を受けて、タイミング良く出てきた日本のアベノミクスであるが、ここには財政再建という矢は存在していなかった。日本もドイツのように、上昇気流に乗りやすい環境にあったが、その上昇気流をリフレ策というある意味禁じ手を使うことで、一気に生み出した。その結果が2012年11月あたりからの急激な円安と株高であり、世界経済の回復がさらに後押し、東京オリンピック開催決定というさらなるフォロー要因も加わって日本の景気も回復をみせ、円安要因などもあり物価も上昇した。
それにより、2013年度の税収も予想以上の増加が見込まれ、甘利明経済再生担当相は「かなりの上振れが見込まれる」との見方を示した。さらに「その要因が構造的なものであれば、その一部をさらなる経済成長に投入するというのは理屈が立つ」と指摘したそうである。つまりは税収上振れ分を法人減税の財源にあてることに前向きな考えを示した(6月27日のロイター記事より)。
法人減税を打ち出したものの、その財源は明記されなかったが、このあたりをあてにしていた可能性がある。このように日本では特に財政規律を守るべき指針はない。基礎的財政収支の目標もあくまで目標であり、このように税収が回復しても財政再建に充てるようなことがなければ、日本の財政再建が進むはずはない。それでも長期金利は0.6%以下にいるように、日本国債の信認が維持されているとかに見えるところが本来のリスクを覆い隠している。借金はいずれ返す必要があるものであり、膨らみ続ける債務バブルはいつか破裂するリスクを秘めている。