日本の長期金利が0.6%近傍に張り付く理由
日本の長期金利(10年国債の利回り)は、今年始めに0.7%を割り込んでから0.6%近傍での安定した推移が続いている。FRBのテーパリングの決定などから米長期金利が3%台に上昇し、その影響で日本の長期金利も昨年末から一時的に0.7%に上昇した。この一時的な場面を除くと、日本の長期金利は昨年10月あたりから0.6%近傍にある。
さらに昨年5月にドル円が2009年4月以来となる100円台への上昇などから、長期金利が一時的に1%近くまで上昇したこともあった。しかし、これも一時的な金利上昇となりその後再び低下した。
昨年4月の日銀の量的・質的緩和が決定される前、3月にはにすでに日本の長期金利は0.6%を割り込んでいた。日銀の異次元緩和決定後に0.315%まで低下するような一時的な下振れもあったが、この0.6%という水準は日銀の異次元緩和の影響を受けて、居心地が良い水準のようである。
0.6%と言う水準に何かしら意味があるのか。保有する投資家にとってコストと、ある程度の期間リスクに見合った最低ラインが0.6%との見方もある。コストに関しては以前のゼロ金利政策の時にも同様のことが発生していた。ゼロ金利政策といっても政策金利はゼロとはしていない。これは短期資金を運用する際にもある程度のコストが掛かるためであり、日銀の場合も政策金利である無担保コール翌日物の誘導目標値は0~0.1%と幅が設けてあるのはそのためである。
昨年4月5日の量的・質的緩和政策が決定された翌日に長期金利が0.315%まで急低下したあとに、急反発し0.620%に戻ったことも、0.6%以下ではコストや期間リスクに見合わないという説明も成り立つかもしれない。
日本の長期金利の最低ラインが0.6%近傍であるとするならば、日銀の量的・質的緩和政策により、日銀の狙い通りに長期金利をほぼ最低水準に張り付かせることに成功したことになる。
物価も日銀の思惑通り、市場の予想以上の上昇となり消費増税の影響を除いてもすでに全国のコアCPIは前年比プラス1.5%まで上昇した(5月分はやや低下の見込み)。これにより実質長期金利は低下することになり、日銀は異次元緩和の効果とのひとつとしてこれも強調している。
日銀が新発債を中心に大量に国債を買い入れることにより、イールドカーブを押さえつけている。昨年の量的・質的緩和政策導入時にはこのような0.6%近傍で安定するという結果は想定できなかった。このため今後のシナリオも描きづらい。ただし、押さえつけられていたものはいずれ反発する。このまま半永久的に押さえ続けることもできないはずである。その反発するタイミング、その原因となりそうなものを要因として想定しておくことも、今後のリスク回避には必要となりそうである。