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個人向け国債が毎月発行に?

久保田博幸金融アナリスト

3月19日付けの日経新聞によると、財務省は個人向け国債について2013年度中に現在発行されている3種類すべてを毎月発行する態勢に移行するそうである。個人向け国債の1回当たりの発行額を少なくする代わりに発行の頻度を高め、個人の投資需要にきめ細かく対応するとのこと。

現在、個人向け国債は個人向け復興国債として発行されている。名称は異なっていても以前の個人向け国債と商品性にはなんら変わりはない。個人向け国債は半年毎に長期金利の状況に応じて金利を見直す10年変動タイプの国債と5年固定金利タイプの国債が1月、4月、7月、10月の年4回発行四半期毎に発行されている。また、3年固定タイプの国債が毎月発行されている。これを統一して、10年変動、5年固定、3年固定すべて毎月発行とするようである。ただし、いつからスタートするのかは、販売する金融機関のシステム変更の必要がある可能性もあるとみられ、近く個人向け国債を取り扱う金融機関に意見聴取を始めるそうである。

毎月発行にする狙いについては、これまでは国債の償還が集中する月と、新規に販売する月にズレがあった。このため満期を迎えた国債の償還金が新規の国債に再び投資されず、保険や投資信託、預金に移ってしまうことが多かったこともある。このように毎月販売には国債の再投資をしやすくする狙いがあるとか。

ただし、個人向け国債の資金がほかの金融商品(その多くは預貯金の可能性も)に流れていったのは、長期金利の低下による影響が大きい。このため、毎月販売としても長期金利が低位安定している限りは、なかなか販売を増額することは難しいかもしれない。

3月20日から日銀は新体制に移行し、今度は次元の違う金融政策により、さらに長期金利の低い状態が続く可能性もある。ただし、その可能性の是非はさておき、日銀が目標に掲げる2%の物価上昇の可能性を本気で信じるのであれば、今後は10年変動タイプへの需要が伸びてくる可能性もある。

個人向け国債は利子が低いのは確かであるが、価格変動リスクはなく、当初の1年は特別な理由がないと売却できないが、その後は財務省が買い取るので流動性リスクもない(当初1年除く)。信用リスクについては、国債は円と同様の信用力を持ち、国内の金融商品で最も安全性が高いものである。特に購入金額の限度額は設けられておらず、1000万円以上の購入も当然可能である。本来であれば、元本を毀損したく資金の投資先としてはベストな金融商品である。このあたり、もう少し認識されても良いように思う。

2013年度国債発行予定額によると、個人向け国債の2012年度の販売予定額は2兆円、2013年度の販売額予定額は1.6兆円を見込んでいる。長期金利の超低位が続く限り、なかなか販売は伸びづらいと思うが、毎月発行にすることで、10年変動、5年固定が購入しやすくなることは確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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