核武装しても不安…金正恩が「敵基地攻撃能力」を恐れる本当の理由

金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮が、日本政府の「敵基地攻撃能力」を巡る動向に警戒感を募らせている。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は17日、自衛隊が北海道で大規模な実働演習を行ったことや、日本政府内で「敵基地攻撃能力」についての論議が行われていることなどに対し、「日本の軍国化は戦争を視野に入れた最終段階に至った」とする論評を配信した。同通信が日本非難の論評を出したのは、菅義偉内閣の発足後はこれが初めてだった。

さらに、同通信は19日付の論評で、日本が「地上配備型迎撃システム『イージス・アショア』の配備計画の撤回による『防衛空白』にかこつけて武力増強によりしつこく執着している」として、日本の戦力増強を非難した。

北朝鮮が日本の軍備増強を非難するのはこれが初めてではない。ただ「敵基地攻撃能力」は当面、北朝鮮を主な対象として検討されるだけに、同国も日本に対する非難や主張、要求を具体化させる可能性もある。

19日付の論評は、日本が「弾道ミサイルに対応するための専門艦船を建造し、2022年まで射程500キロ以上に及ぶ打撃ミサイルを装備しようとしている」と言及。これは「日本が唱える『敵基地攻撃能力』保有の輪郭をさらけ出したもので、地域の平和と安定を破壊する危険極まりない侵略戦争準備策動」だと非難した。

日本政府は、秋田と山口への配備を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画の代替策として、弾道ミサイル迎撃に特化した専用艦建造を有力案とする方針を米側に伝達したとされる。

また航空自衛隊は2022年までに、射程約500キロのノルウェー製対地・対艦ミサイル「JSM」を取得するという。JSMはF35ステルス戦闘機の胴体内部に搭載でき、レーダーに探知されにくいF35のステルス性を生かした対艦・対地攻撃が可能となる。日本政府は離島防衛などで敵の脅威圏外からの対処を取得の目的としているが、「敵基地攻撃能力」の保有に踏み切った場合、JSMが北朝鮮国内のミサイル発射台を叩く手段として用いられる可能性はきわめて高い。

そもそも、北朝鮮は韓国軍がF35や、JSMと同種のミサイルの導入を進めていることを猛烈に非難してきた。核ミサイルを実戦配備したと見られる北朝鮮の軍事力は、その点だけで見れば日本や韓国にとって深刻な脅威だ。核さえあれば、通常兵器しか持たない日韓に、北朝鮮はそれほど気を使う必要はないように思えるかもしれない。

だが、北朝鮮には致命的な弱点がある。他ならぬ、金正恩党委員長だ。北朝鮮は、現在の世界では類を見ない強力な独裁体制を敷いているだけに、独裁者を失えば体制崩壊に直結しかねない。ステルス戦闘機が、北朝鮮の防空網にまったく引っかかることなく金正恩氏の居場所に接近できるならば、それはきわめて深刻な脅威なのだ。

(参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

日本の「敵基地攻撃能力」の論議は、そんな弱点を抱える北朝鮮を強く刺激する可能性がある。今後の北朝鮮の反応が興味深い。