英政府とEUが離脱協定で暫定合意 英国は関税同盟に継続加盟か

離脱交渉が長期化し、新たな国民投票を求める声が高まっている(写真:ロイター/アフロ)

 英国の欧州連合(EU)からの離脱(「ブレグジット」)に向けて交渉を続けてきた英政府とEUは、13日、離脱協定の草案に合意した模様だ。複数の英メディアが伝えた。

 草案は14日の特別閣議に提出される。合意前、メイ首相は閣僚を官邸に呼び、一人一人から理解を得るよう説得に時間を費やした。

 400~500ページに上ると見られる草案の内容はまだ公表されていないが、英領北アイルランドとアイルランド共和国との物理的な国境(「ハードボーダー」)の設置を避けるため、英国全体が継続してEUとの関税同盟に加入する案が入っているという。北アイルランドにはこれに加えて、何らかの特例が設けられる可能性もある。

 英政府はEUとの離脱交渉が「95%合意した」と述べてきたものの、最後の障害となっていたのが、この「アイルランドの国境問題」だった。

 フィナンシャル・タイムズによると(13日付)、北アイルランドを特例とする措置はEU側がもともと推していた案で、これが合意内容に入らないため、英国全体での関税同盟への加盟の詳細についてはEU側が決める方向で交渉が進んでいるという。

 暫定合意のニュースが報じられたことで、ポンドは一時的に上昇した。

 英政府もEU側も「これからも交渉は続く」と述べている。

 ブレグジットのための交渉は2段階になっている。最初の段階は離脱のための交渉で、正式合意によって、2019年3月末、英国はEUを離脱する。約2年間の移行期間が設けられる。

 第2段階は離脱後の通商関係を築くための交渉になる。

 英国が国民党投票によってブレグジットを決めたのは、2016年6月。2年後の秋、ようやく離脱交渉で合意する兆しが見えてきた。

 しかし、予断は許されない。内閣及び与党保守党内に離脱強硬派(離脱後は、関税同盟からも単一市場からも出る事を主張)が存在し、草案を支持しない場合も大いにあるからだ。平議員だが党内右派勢力に大きな影響力を持つ強硬派議員ジェイコブ・リースモッグ氏や元外相のボリス・ジョンソン氏は草案に対し、「これでは英国はEUのなかにいたままだ」と批判した。

 北アイルランド地方の民主統一党は、事前に草案を見る機会を与えられなかった事で怒り、「受け入れがたい」と述べている。

 この草案で閣議の支持を得た後、英政府と EU側は11月25日に開催される欧州委員会の特別会合で正式な承認を受ける事を期待している。

 これまでに伝えられたところによると、草案には離脱合意の声明文、英国とEUの将来図を示す文章が入る見込み。声明文には北アイルランドとアイルランドとの間に物理的な国境を設けないためにはどうするかが入る模様だ。離脱後、EU市民の権利が保障される事、移行期間が設置される事、390億ポンドの離脱費(英メディアは離脱を結婚にたとえ、「慰謝料」と呼ぶ)などが明記される。

 

 もし内閣がこの草案を拒絶すれば、交渉はやり直しとなる。

 内閣が了承した場合、EU側(英国を除く27の加盟国と欧州議会)が草案をそれぞれ精査する。

 英国内では、EUとの間で合意された内容を下院で議論する過程を経るが、議員らが合意内容を否決する可能性もまだあると言われている。強硬派からすれば、伝えられている合意案は十分な離脱ではなく、離脱反対派(議員の大部分がこちらに属する)は英国が不利な状態に置かれていると見て、否決に向かうと言われている。

 メイ政権は離脱に向けての最大の難局に直面しそうだ。「敵」は外(EU)にではなく、英国内にいるのである。