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英フィナンシャル・タイムズの電子版購読者が65万に ーブレグジットや米大統領選が追い風に

小林恭子ジャーナリスト
紙版と電子版の合計では購読者数は85万に(写真:ロイター/アフロ)

昨日、英フィナンシャル・タイムズ(FT)はトランプ米大統領への単独インタビューを掲載した。

今週にはトランプ氏と中国の習近平国家主席との初の会談が行われる予定で、これに先駆けての掲載となった。

トランプ氏は「中国が北朝鮮政府への圧力を強めなければ、北朝鮮の核の脅威を取り除くために米国が単独行動に出ると警告した」などと発言し、今朝の英メディアはタイムズ紙、BBCのニュースサイトなどがトップ記事でその内容を紹介している。

ほかのメディアに先駆けてグローバルに重要なニュースを報じるという、今のFTのジャーナリズムを体現するような展開となった。

日経傘下にあるFTは3日付で年次報告書を発表し、これによると電子版購読者数が昨年時点で65万に達し、前年比14%の増加となったという。印刷版と合わせると約85万(前年比8%増)に上る。

増加の追い風となったのは、去年6月に英国で行われた「ブレグジット」国民投票と、11月の米大統領選だ。それぞれ、週平均と比べて前者では75%、後者では35%の増加となった。

発表資料によると、FTのジョン・リディングCEOは「日経とのパートナーシップが始まって最初の1年に、記録的な有料読者数を獲得した」。新たなデジタル製品や収入源獲得にも投資が行われたという。

FTのウェブサイト、FTコム(昨年、刷新)はローディング時間がデスクトップでは1・5秒、モバイルでは2・1秒かかり、これをFT側は自慢としているようだ。読者のエンゲージメント率も以前に比べて、30%増加したという。

日経とFTの間の記者レベルの人事交流が継続しており、これまでに20人近くが互いの編集室で情報交換や作業を学んだという。

「FT日経フェローシップ」という仕組みが作られ、FTと日経からそれぞれ一人の記者を選び、サンフランスシスコで特集記事を作る試みも行われている。

発表資料を見る限り、具体的な損益の数字は出していない。

プレスガゼットの分析によると、今年2月時点でのFTの紙の発行部数は18万4279部。前年比6%減だ。FTは国内よりも海外での読者が多い新聞だ。約18万部の中で、英国では6万1158部、欧州大陸では5万9771部、アジア地域では2万7572部、米国では3万5778部が発行されているという。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊は中公新書ラクレ「英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱」。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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