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エンゼルス大谷と3シーズンを共にした打撃コーチに聞いた。投手復帰、本塁打量産、打撃ケージでの思い出

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2020年から2022年シーズンまで、エンゼルスでアシスタント打撃コーチを務めたジョン・メイリー氏に、大谷がなぜ、今季これほど本塁打を量産しているのかなどを聞いた。

 メイリーコーチは2010年から22年まで、マーリンズ、アストロズ、カブス、フィリーズ、そしてエンゼルスでコーチをしてきた。現在は、カブス傘下3Aアイオワカブスの打撃コーチをしている。2016年はカブスの打撃コーチとしてワールドシリーズ優勝に貢献した人でもある。

 -今年の大谷の打撃をどう見ているか

「彼はどんどん良くなっている。彼の仕事ぶり、努力、素晴らしくなりたいという欲求は、私がこれまでに見たことがないものだ。彼は試合とチームメートに敬意を表し、ハードワーカーだ。彼は多くを語らないが、その努力は信じられないほどだ」

 -打撃コーチの視点から、どのようなテクニックが彼の打撃を可能にしているのか教えて欲しい

「私が彼といっしょだった最初の年の2020年は、彼はひざの手術から復帰したところだった。それで下半身が使えなかった。股関節を素早く回転させることに困難があった。彼が健康になったとき、どのようにボールを自分の前に置き、そして股関節を回転させるかを学んだ。その股関節の回転によってスイングをよりタイトに保てるようになった。なぜならば彼はテコと長い腕を持っているからだ」

 -MVPを獲得した2021年と今年の大谷にはどのような違いがあるか

「それほど違いがあると思わない。私は何か違いがあるか打撃メカニクスを分解して見ていないけれども、パフォーマンスの観点から見ると、彼は、さらによりよくなっている。対戦相手ピッチャーが彼にどのような投球をするのかをさらに学び、全ての投手と何度も対戦してきて、相手がどのようにアウトを取ろうとしているかもわかっている。こういった種類のことやゲームプランも、とてもよいのだろう。彼はスペシャリストだ」

 -右肘の靭帯損傷のニュースがあった。彼が希望した場合、また、二刀流ができると思うか

「イエス。一生懸命にやり、十分に体のケアをして、彼の準備が整えばいつでも彼はまた投げるだろう。今までやっていたのと同じくらいできると思う」

 -エンゼルスでコーチをしていたときの大谷に関する印象的な思い出はあるか

「一般的にスター選手は打撃ケージを使いたいときには、自分が打つ時間だと言うことができる。しかし、ショーヘイはそういうことは言わず、どうぞ、どうぞ、と他の選手に譲っていた。今まで私があった中で最も素晴らしい人だと思う」

打撃練習の準備をするメイリーコーチ。筆者撮影

 また、メイリーコーチは、オフシーズンには、他のメジャーリーグやプロリーグコーチとともに、大学や高校野球のコーチを対象にしたクリニックを開催している。

「いろいろなアプローチ、メカニックスドリル、いろいろな人たちの打撃哲学など、いろいろなことを教えている。(メジャーのような)テクノロジーがなくても、技術を習得するためのいろいろなドリルを行い、かみ砕いて伝えている」

 今年のオフシーズンもクリニックを開催予定だという。もしかしたら、大谷の打撃メカニクスの分析もあるかもしれない。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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