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オリオールズのハイド監督に聞いた。優勝争いをしながら、藤浪の適応を支えるには?

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャー1年目の藤浪晋太郎投手が、電撃トレードでアスレチックスからオリオールズへ移籍して2週間あまりが経過した。移籍後、中継ぎとして8試合に登板し、8回2/3を4失点(自責3)、防御率は3.12である。

 オリオールズは2018年オフに、アストロズのゼネラルマネジャーだったエリアス氏をゼネラルマネジャーに迎えてチーム再建に着手し、今季は激戦のア・リーグ東地区で優勝争いを繰り広げている。

 2019年のドラフト一巡目1位で指名したラッチマンは頼れる正捕手に育ち、打撃力も抜群で、オールスターでは、ホームラン競争にも出場した。

 ドラフトだけではない。2019年からはマイナーからメジャーまでデータを重視したコーチングによって中継ぎ陣を育ててきた。抑え右腕のバティスタは身長203センチから100マイル(約161キロ)を超える速球を投げ込むが、マーリンズに在籍していたドミニカ共和国サマーリーグ時代に制球難でクビになった。2016年にオリオールズとマイナー契約後もくすぶっていたが、マイナーにいた2021年シーズンから安定感のある投球ができるようになり、1Aから3Aまで駆け上がり、2022年にメジャーデビュー。データ分析とこれまでからある人間の目を組み合わせたオリオールズのコーチングがバティスタを助けた。

 藤浪がオリオールズに合流した翌日、地元メディアMASNのロック・クバトコさんにチームのコーチング力についてより詳しく解説してもらった。「オリオールズは彼らのプログラムに誇りを持っていると思います。特によい速球に加え、変化球を持っているピッチャーです。藤浪のように速球とスプリットを投げる投手、バティスタのような投手です。(左腕)ペレスもマイナーにいたときには四球を多く与えていたのですが、チームは彼のコマンド(狙ったところに投げる力)に取り組むことができました。(右腕)カノもそうです。やはりコマンドに問題がありました。彼らは、ストライクをよりコンスタントに取れるようなプログラムを開発して、目的を達成するために取り組んでいるように感じますね」。

 オリオールズは抑え右腕のバティスタだけでなく、球宴初出場を果たした右腕カノ、レッズからウェーバー公示されていた左腕のペレスをうまく育ててきた実績がある。ホイト投手コーチは藤浪について「視覚的な助けを与えたい」としていた。

 藤浪は、7月25日から30日までの3試合を無失点に抑えており、監督からの信頼を積み上げていた。しかし、8月2日のブルージェイズ戦では、1-1の六回2死一、二塁から2番手で登板したが、四球で満塁のピンチを迎えると、2つの押し出し死球を与える大乱調。

 オリオールズはピッチャーたちが持てる力を発揮できるようにコーチングしてきた実績はあるが、今は激戦のア・リーグ東地区優勝争いをしており、戦いながら育てるのは難しい。2019年から2022年まではチーム再建期で、成績は下位に低迷しており、バティスタやペレスはその間に登場してきた。

 メジャー1年目の藤浪の適応を助け、優勝争いをする難しさはある。藤浪の乱調もあって試合に負けた翌日、ハイド監督はこのように話した。「バランスのある動きが必要になる。我々は選手が成功できるポジションで起用できるよう最善を尽くし、対話をし、できるだけリラックスできるようにしていく。そして、パフォーマンスするのは選手の仕事だ。19年、20年、21年のチームではない。我々は8月に勝とうとしているチームで、勝ちに貢献できる選手を探している」。

 その起用プラン通り、4日のメッツ戦では藤浪を7点リードの9回に起用し、藤浪は無失点に抑えた。6日のメッツ戦では、2-0で迎えた8回に登板し、三者凡退に仕留めて勝利に大貢献。

 最も成功できる状況を考える首脳陣と、それに応えようとする藤浪の優勝争いが続いている。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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