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大谷翔平の負けず嫌いエピソードを、エンゼルスの元スタッフが披露。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

今年9月、メジャーリーグのエンゼルスで2017年から2021年1月までパフォーマンス統合コーチをしていたライアン・クロティンさんにオンラインで話を聞く機会を得た。

現在、クロティン氏は、ピッチャーのケガを予防するテクノロジーや用具を開発・販売するArmCare.com社の副社長であり、ルイジアナ工科大学やニュージーランドスポーツパフォーマンス研究所にも籍を置いている。早稲田大学の矢内利政教授らと、MLBとNPBとの投手のケガの傾向の違いや投球特性の比較をテーマにした論文もある。

クロティンさんは、元エンゼルスのスタッフとして、エンゼルスの大谷翔平が昨シーズン、今シーズンと2年連続で投打にわたって圧倒的な結果を残した理由についても語り、「全てにおいて、大谷がとても負けず嫌いであること」とした。

それを表すエピソードを紹介してくれた。エンゼルスが大谷と契約したのは2017年12月のことだ。エンゼルスは、大谷との契約前にいくつかテストをし、ジャンプ力も測定した。このときの大谷のジャンプ力の数値はチームの平均以下だったそうだ。しかし、大谷はどの程度がベストの数値と見なされるのかを知りたがったという。チーム合流時に再び測定したところ、1度目に測定したものよりも5インチ(約12.7センチ)も伸ばしてきた。その後、チームからの提案によって筋のパワーアップ発揮を増大させる効果があるとされるプライオメトリックトレーニングを取り入れたところ、さらに3インチ(約7.6センチ)伸ばし、チームの上位2%以内に入ったというのだ。

また、大谷の活躍の背景には、睡眠があるといわれており、よく眠ることで知られている。クロティンさんは「睡眠は重要な要因だが、とても個人差がある」と前置きしたうえで、「野球選手にとっては、いかに素早く眠りにつけるかが戦略のひとつになる。睡眠によって、成長ホルモンがより分泌され、それによって筋が再生される」と話す。

大谷は十分な睡眠をとっているだけではなく、うまく起きているはずだと、クロティンさんは付け加えた。「彼はうまく起きているはずだ。起きてから水を飲む代わりにコーヒーを飲んで、トイレに行き、体の水分を失っている人もいる。才能に恵まれているだけで栄養摂取面ではひどい人もいる。もちろん、試合へアプローチするメンタル面も大きな要素だ。大谷は競争力を維持するためには、人が見ていないところのさまざまなことにおいても競争力を発揮しなければいけないことを知っている」

つまり、グラウンド外のさまざまなことにおいても負けず嫌いを発揮しているのだ。

大谷の一連の行動は、道徳的な言葉を使うなら「努力」かもしれない。自己啓発的な言葉を使うなら「徹底した自己管理」と表現できるかもしれない。

しかし、クロティンさんの言う通り「全てにおいて、とても負けず嫌い」が、一番しっくりくるのではないか。

メジャーリーグでも、いくつもの歴史的記録を塗り替えてきた大谷だが、来シーズンも、さらなる高みを目指して、負けず嫌いであり続けるだろう。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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