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聞いていいのか?モンペなのか? 「なんで、うちの子、試合に出してもらえないんでしょうか」

谷口輝世子スポーツライター
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

子どものレクリエーションチームであれ、国の代表チームであれ、監督やコーチが自分を試合で使ってくれない、プレーする機会が十分に与えられないというのは悔しいものです。

出場時間の多い少ないの問題は、ほとんどのスポーツの場で起こります。子どものスポーツや学校運動部では、ただでさえ悩ましい出場時間の問題に、保護者が絡んできて、やっかいです。

「うちの子も頑張っていると思うのですが、なんで、試合に出してもらえないんでしょうか」

保護者からこんな言葉を投げかけられたら、頭が痛くなるような、うんざりするような気分になるコーチ、顧問の先生も少なくないでしょう。

指導者として、できるだけ公平にチャンスを与えているつもりなのに、なぜ、保護者は自分の子どもしか見えていないのか? 無償のボランティアで指導しているのに、不満をぶつけられたら、やっていられない…。だいたい、親がそうやって選手起用にまで口を挟んできて、自分の子どもにも過干渉だから、子どもが伸びないのだ…。

一方、保護者は、年度はじめの保護者会で「質問のあるときは、ご連絡ください」と言われたから…。コーチ、顧問の先生は我が子の良いところを見てくれていないように感じる。保護者として、子どもについての心配をコーチや先生と共有するという当たり前のことをしただけ、と思っているかもしれません。

私は、年度はじめに、コーチ、顧問の先生と保護者とのコミュニケーションのルールを決めておくことを提案します。米国の学校運動部などが取り入れている方法です。

保護者が、子どもの出場時間について聞きたいときには、コーチや顧問の先生に、質問してもよいのか、質問する場合にはどのようにすればよいのかをあらかじめ決めておくのです。

例えば、このようなものです。

●保護者は、子どもの出場時間やポジション、チームの戦術について、コーチや顧問の先生に質問することはできません。

●出場時間をもっと得たいと思うときには、選手である子ども本人が、コーチや先生に質問してください。

●選手である子どもと、コーチや先生とは「出場機会を増やすためには、何を伸ばせばよいのか」という視点で話し合いましょう。(かんたんにいえば、他のチームメートをこき下ろすようなことはしないということですね)

●保護者から、出場時間やポジションの質問は受け付けられませんが、「選手として成長するためにどうしたらよいか」という質問は受け付けます。

これは一例ですので、この通りである必要はありません。そのチームの事情に合うルールを作ってください。

こういった内容の話し合いは、両者とも気持ちが落ち着いているときにやるほうがよいのです。試合の前後は気持ちが高ぶっていますし、練習準備に追われている時間は忙しいので、避けたほうが懸命です。質問や相談に応じられる日とその時間帯も前もって決めておいたほうがよいでしょう。

「出場機会を得るためには、何をすればよいか」という子どもの質問に、コーチが耳を傾けてくれる。課題にしていたところが上達してきた場合には、それに応じて出場機会を増やしてもらえると子どもはもちろん、保護者も、コーチや教員を信頼でき、出場時間やポジションについて不満をぶつけることが減るように見受けます。

子どもが体調不良で休むといったことは、保護者と、コーチ、顧問の先生との間で、その都度、連絡しなければいけない事柄でしょう。特に子どもの年齢が低いときは。ケガや体調不良など緊急に相談するべき事柄と、「出場時間の質問」とは分けて対応するべき内容であることもはっきりさせておきます。

コミュニケーション方法を決めて、明文化して、印刷物で知らせておく。

印刷物で知らせたからといって、スッキリ!と解決はしません。しかし、前もって、コミュニケーションのとり方について了解しあうことで、多少は軽減されます。

「こんなこと聞いてくるなんて非常識な親!」

「コーチは気がかりなことは何でも相談してくださいって言ったのに!」

コーチ、顧問の先生の「常識ゾーン」と、保護者ひとりひとりが持っている「常識」のズレから起こるイライラの量は減るように感じています。

ルール作りの土台になるもの、より具体的な内容、なぜ保護者はイライラしてしまうのかなど、子どものスポーツにおけるさまざまな問題と対処法ついては近著の

「なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ」(生活書院)に詳しく記していますので、参考にしていただけると、うれしいです。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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