「早生まれ」スポーツでの課題、米国の場合  ――体重考慮の取り組みや年齢詐称事件まで

(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 12月3日、日本陸連が各都道府県の強化担当者に対して競技者育成方針について説明し、成長の個人差に配慮するように求めた。「早生まれ」の子どもが好結果を出せずに競技を離れていくことを懸念。長期的な視野で育成し、大会の年齢区分も工夫していくという。

 誕生月にかかわらず、早熟、晩熟という個人差はある。しかし、筆者が暮らすスポーツの盛んな米国でも 、同年齢や同学年の区切りのチームでトライアウト(入団テスト)をすると、月齢の若い子どもが不利になることが複数の調査で分かっている。 Relative Age Effect(相対的年齢効果)という言葉で検索すると、多くの調査結果が発表されているのが分かる。

 たとえば、エリートアスリートが集まる米国大学スポーツのNCAA(全米大学体育協会)では、NCAA1部チームの選手の誕生月を調べたところ、一定の傾向が見られた。

 NCAA1部のアイスホッケーでは、1月から3月生まれの選手が多く、9月から12月生まれが少ない。これは、ユースアイスホッケーが1月1日生まれから12月31日生まれを1学年としてチーム編成をしているからだろう。

 NCAA1部の野球では、9月から12月生まれが多く、1月から3月生まれが少ない。2015年までは、リトルリーグは5月1日生まれから翌年の4月30日生まれを同学年として編成。(2016年からは段階的に移行し、2018年からは、9月1日から翌年の8月31日生まれを同学年としてチーム編成する)。また、米国の学校は多くの州で9月始まりであるため、学校野球部では9月から12月生まれは、同学年のチームメートに比べて早く誕生日を迎える。

 米国のユーススポーツでも、「早生まれ」や、晩熟の子どもが不利なことは分かっているが、対策となると難しい。

 アメリカンフットボールでは、チーム編成をする際に、「年齢別」だけでなく、「体重別」と「技術別」を盛り込んでいるリーグもある。アメリカンフットボールは、激しいコンタクトプレーがあり、体重差による怪我のリスクもある。晩熟、早熟だけでなく、安全面という観点から配慮ともいえるだろう。

 加えて、アメリカンフットボールは「年齢」だけでなく「体重別」も盛り込んでいるほうが、生まれ月による不利を被りにくいことが分かった。同年齢のチームのなかでも月齢の若い子どもの参加率も高くなったそうだ。11月29日にミシガン州立大のユーススポーツ学会で、ジョージ・ワシントン大学の研究者、シエラ・ジョーンズさんが発表したものだ。(Association between Relative Age Effect and Organizational Practice of American Youth Football)

ただし、ジョーンズさんによると、問題点も明らかになったという。参加希望者が少ないところでは、この2つの要素を盛り込むと、チームを作ることが困難になり、年齢別だけでチーム編成するしかないのだ。

 ユーススポーツリーグや大会の主催者が誕生月に配慮するのは難しい面がある。そこで、米国人たちはいくつかの方法で、誕生日による不利を「自衛」している。

 米国では飛び級する子どもがいる。(上の学年の内容は学ぶことができるが、学年そのものを飛び級することは学校区の規則で認めていないところも多い)。その反対に就学を1年遅らせる子どももいる。就学を1年遅らせる子どもは全体の数パーセントいると言われている。

 たとえば、筆者の住むミシガン州の学校の学年の区切りは、9月1日生まれから翌年の8月31日生まれまで。(以前は12月2日から翌年の12月1日だった。最近、法律が変わった)。ミシガン州の高校運動部の公式戦は新しい年度が始まる9月1日に19歳未満であれば、出場できる。しかも、学校の年度は6月で終わり、7月、8月の夏休み期間は公式戦がない。

 ということは、7月か、8月に誕生日を迎える子どもは就学を1年遅らせると、高校の最終学年を18歳10ヵ月で終えることになる。運動部活動も18歳10ヵ月で出場できる。夏生まれの子どもが、そのまま就学すると、17歳10カ月で卒業し、運動部活動も17歳10カ月で終了することになる。

 全米大学体育協会のNCAA強豪校でのプレーを希望する場合は、「ポスト・グラデュエイト」という手段もある。「ポスト・グラデュエイト」は卒業後という意味だ。高校卒業後にすぐに大学に進学するのではなく、もう1年間を高校などで過ごしながら、大学入学へ向けての準備期間として使うのだ。

 たとえば、「スラムダンク奨学金」は、優れた日本のバスケットボール選手に米国留学のチャンスを与える制度だ。現在の留学先は米国コネティカット州のセント・トーマス・モア・スクール。スラムダンク奨学金で留学した選手は、この学校の「高校生」ではなく、大学進学のための準備「ポスト・グラデュエイト」という立場になる。セント・トーマス・モアのプレップチームは、「高校の最終学年」ではなく、主に大学進学のための準備をしている「ポスト・グラデュエイト」の選手たちで編成されている。そして、同じようなチーム編成をしている他校チームと試合をするのだ。

 

 しかし、正攻法ばかりではない。

 米国のユーススポーツでは、年齢詐称事件が時々、明るみに出る。

 UCLAからNBA入りしたシャバス・ムハンマドは、1993年生まれとしていたが、本当は1992年生まれだったことが分かった。ムハンマドが大学でプレーしたときにロサンゼルスタイムズがスクープした。最初は単純な書き間違えかと思われたが、父親は1度目のロサンゼルスタイムズの取材に対しては「息子は19歳でネバダ州生まれ」と答えて電話を切った後、記者に電話を掛け直し「息子は20歳でロングビーチ生まれ」と訂正してきたという。

 ムハンマドと彼の父が何歳のときから年齢を詐称していたのかは不明だが、実年齢では1年下の選手たちと試合をすることは、高校のバスケットボール選手ランキングの順位を上げ、より良い条件で大学入学を勝ち取るのに役立ったのではないかと考えられている。

 余談だが、私は子どものスポーツチームのマネジャーをしていたことがある。試合のたびに持参しなければいけないファイルがあった。チーム全員の出生証明書のコピーの束である。相手チームや審判から、選手の生年月日を求められたときに開示するために。である。