Yahoo!ニュース

“フットサル界のヤングなでしこ”が目指す、オリンピックの金メダル。歴史的偉業まであと1つ!

北健一郎スポーツジャーナリスト
ユースオリンピック に出場中のU-18フットサル女子日本代表(提供:OIS/IOC/ロイター/アフロ)

強豪スペインを撃破して決勝進出

“フットサル界のヤングなでしこ”の快進撃が止まらない。

アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催中の第3回ユースオリンピック競技大会。女子フットサルで日本代表が決勝進出を果たした。

日本は大事なグループリーグの初戦でカメルーンに6-2で勝利すると、第2戦でチリを4-1、第3戦でドミニカを6-2で下して3連勝。最終戦でポルトガルに0-2で敗れたものの、グループ2位で準決勝進出を果たした。

10月16日の早朝(日本時間)に行われた準決勝、スペイン戦。4試合で39得点5失点と圧倒的な成績で勝ち上がった優勝候補に対して、日本は一歩も引かない戦いを見せる。1点をリードされて迎えた後半の立ち上がり、日本は前田海羽(福井丸岡RUCK)が決めて追いつく。すると、5分に荒井一花(福井丸岡RUCK)、13分に追野沙羅(ラオフェン)と立て続けにゴール。3-1と突き放す。

2点差にされたスペインはFPの選手がGKのユニフォームを着て、ゴールを空けたまま5人で攻める“パワープレー”をスタート。素早いパス回しからシュートを何本も打たれるがFPとGKの連携がとれた守備で失点を許さない。残り11秒で1点差とされるも、そのまま3-2でタイムアップ。決勝では、もう一方の準決勝でボリビアを下したポルトガルと再戦することになった。

ユースといえども「オリンピックで金メダルをとった」となれば、日本フットサルはもちろん、日本のスポーツ界にとっても歴史的快挙となる。

木暮監督の綿密なプランニング

U-18フットサル女子日本代表を率いる木暮賢一郎監督(中央)/本田好伸
U-18フットサル女子日本代表を率いる木暮賢一郎監督(中央)/本田好伸

地球の裏側で大活躍を見せているU-18女子フットサル日本代表だが、潤沢な準備期間が与えられていたわけではない。アルゼンチンへの出発直前に国内合宿を2日間、現地で5日間。ほとんど即席チームといっていい。

それでも、世界の強豪国と渡り合い、金メダルまであと一つのところまでこれたのはなぜだろうか? 大きいのは、女子のフル代表も兼務する木暮賢一郎監督による綿密なプランニングだろう。

国内合宿での最終日、関東女子リーグ選抜との練習試合を終えたあと、木暮監督はメンバー選考とチーム作りについての狙いを明かしている。

「U-18の上にはフル代表があります。監督が同じということは、同じプレーモデルでU-18からフル代表への流れを作ることが一番です。その中で、頭の中に入る容量や、日常で戦術的なことをやっているかどうかというものもあるので、当然、フル代表と比べれば変化はあります。ですが、基本となる大枠のモデルは一緒です。

 自分が女子監督を引き受けた時に、ユースオリンピックがあることは知っていましたし、そこへの出場から逆算して、(木暮監督が指揮を執った)トリムカップ(全国選抜フットサル大会)で戦った日本女子選抜のメンバーも2人呼んでいます。

 JFAフットサルタレントキャラバンでは、丸岡や富山のLaufen(ラオフェン)には事前に行っていますので、全体的には、自分と一緒にトレーニングしたことのある10人を選んでいます」

 ユース五輪を見据えて、優秀なタレントの発掘を行い、チームのコンセプトとなる戦術ベースを早い段階から植え付ける--。限られた準備期間の中でも、最高の結果を出すために準備してきたのが、今大会での快進撃につながっているのは間違いない。

 女子フットサルの決勝、日本vsポルトガルは日本時間で10月18日の早朝6時に行われる。金メダルまで、あと一つ。果たして、“フットサル界のヤングなでしこ”は表彰台の一番高いところに上れるのか。

U-18フットサル女子日本代表の集合写真/本田好伸
U-18フットサル女子日本代表の集合写真/本田好伸

【U-18フットサル日本女子代表メンバー】

スタッフ

監督:木暮賢一郎

GKコーチ:内山慶太郎

フィジカルコーチ:下地達朗

GK

1 須藤優理亜(Laufen)

2 小林望月(福井丸岡RUCK)

FP

7 宮本麻衣(京都精華学園高)

5 追野沙羅(Laufen)

3 横山凜花(福井丸岡RUCK)

6 荒井一花(福井丸岡RUCK)

10 池内天紀(福井丸岡RUCK)

4 前田海羽(福井丸岡RUCK)

9 山川里佳子(福井丸岡RUCK)

8 安部美楽乃(十文字高)

フットサル全力応援メディアSAL

スポーツジャーナリスト

1982年7月6日生まれ。北海道出身。2005年よりサッカー・フットサルを中心としたライター・編集者として幅広く活動する。 これまでに著者・構成として関わった書籍は50冊以上、累計発行部数は50万部を超える。 代表作は「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」など。FIFAワールドカップは2010年、2014年、2018年、2022年と4大会連続取材中。 テレビ番組やラジオ番組などにコメンテーターとして出演するほか、イベントの司会・MCも数多くこなす。 2021年4月、株式会社ウニベルサーレを創業。通称「キタケン」。

北健一郎の最近の記事