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メルセデス・ベンツ、Cクラスに新世代「EQブースト」搭載【動画アリ】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
写真は全て筆者撮影

大成功モデルのフェイスリフトでパワートレーン一新

 スイスのジュネーブで開催されているジュネーブショーにおいて、メルセデス・ベンツは同社の基幹モデルであるCクラスのフェイスリフトモデルを世界初披露した。Cクラスは2014年に登場し、このクラスにおいてベンチマークとされるとともに好調なセールスを記録してきたモデル。今回のフェイスリフトでは、内外装におけるいわゆる見た目の変化は最小限に抑えられているが、メカニズム等に関しては数多くがアップデートされている。そうした中でも最大のトピックといえるのが、新世代の「EQブースト」の搭載だろう。

メルセデス・ベンツCクラスの開発責任者クリスチャン・フルー氏
メルセデス・ベンツCクラスの開発責任者クリスチャン・フルー氏

 メルセデス・ベンツCクラスの開発責任者であるクリスチャン・フルー氏は言う。

 「今回のCクラスでは、V型6気筒エンジン以外の全てのパワートレーンをリフレッシュしました。ディーゼルエンジンはEクラスなどにも搭載される新世代のクリーンディーゼルの2.0Lとしました。また新たにプラグイン・ディーゼルハイブリッドモデルを加えており、これは先の2.0Lのディーゼルエンジンに、90kWを発生するモーターを与えており、新たな13.5kWhのリチウムイオン・バッテリーだけで約50kmを走行することが可能となっています。そしてガソリン・エンジンは、『EQブースト』となったのが特徴です」

 メルセデスは最近、自社の電動車両に対して「EQ」というネーミングを与え始めた。ピュアEVの「EQ」、プラグインハイブリッドの「EQパワー」、そしてハイパフォーマンスなプラグインハイブリッドを「EQパワー+」として、最もマイルドなハイブリッドに「EQブースト」という名称を与えて、電動車両のEQの中に様々な方式があることを示している。

 今回、Cクラスに搭載された「EQブースト」はつまり、もっともマイルドなハイブリッド。先日日本で発表された同社の最上級モデル、Sクラスに搭載された新型6気筒エンジンに、効率化と高性能化を推進する新技術である48V電源システムによるISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせた構成があるが、これよりもさらにシンプルなシステムが与えられたわけだ。

 CクラスのEQブーストは、1.5Lの直列4気筒エンジン(184ps/280Nm)に加えて、14ps/160Nmを発生するベルトドライブのスターター/オルタネーターと48Vの電源システムで構成される。これによって、例えば発進初期はモーターがアシストし、ターボがフルブーストで動くまでのトルクの薄い部分をカバーすることで、力強く滑らかな発進を実現する。さらにシフト時にもこのEQブーストによって、エンジンを理想的な回転数へ素早く到達させることができるためシフト時間が短縮される。さらに減速時は回生によって充電を行う他、エンジンをオフして走行するコースティングモードを実現するなどして、徹底した低燃費への対策が取られる。またエンジンのスタート/ストップに関しても、ベルト式スターター/オルタネーターがアシストすることによって、低振動で静かに再始動するという。

 そしてこのエンジンを搭載したC200は、0−100km/h加速7.7秒、最高速239km/hという動力性能を実現しつつも、燃費は欧州複合モードでリッター16.6kmを実現している。しかもこのEQブーストは、のちに2.0L版も加わることがアナウンスされている。

EクラスやSクラスに与えた装備をCクラスにも展開

 さらに今回のフェイスリフトでは、先のクリスチャン・フルー氏いわく、

 「現行のCクラスは既に全車種で50万台以上が販売されており、その成功要因としてスポーティネスとダイナミクスがあります。今回のフェイスリフトでは、この点はキープしながらもさらに改善し、加えてEクラスやSクラスで用いたテレマティクスやアシスタンスを今回のCクラスにも与えました」

新たなヘッドライトは86個のLEDによって構成される
新たなヘッドライトは86個のLEDによって構成される

 という。実際に見てみると、エクステリア/インテリアの変更は最小限に止まるものの、エクステリアではヘッドランプ/テールレンズが新たなデザインとなった他、ヘッドランプはマルチビームLED/ウルトラレンジハイビームが用意された。一方インテリアではハンドルがSクラスなどと同様のデザインとなった他、メーターがフル液晶となり、ナビ画面も大型化している。加えてこれまでは3色だったイルミネーションランプが上級のSクラスやEクラス同様に64色から設定可能となるなどしている。

メーターはアナログ式を辞めて、流行りの全面液晶タイプに
メーターはアナログ式を辞めて、流行りの全面液晶タイプに

 また安全装備面では「アクティブ・ディスタンス・コントロール・ディストロニック」となったが、これはつまりSクラスやEクラスと同レベルの内容を手に入れた。例えば前車追従機能ではアクセル/ブレーキ/ステアリングの自動制御はもちろん、高速道路ではウインカー操作で自動で車線変更するアクティブ・レーンチェンジ・アシストなども備わった。ほかにもマッサージ機能/ヒート&ベンチレーション機能を持ったシートや、NFC技術によるスマホとの連動なども実現するなど、細かな改良が施されている。

インテリアは大きく変わらないがハンドルが上級モデルと同じデザインに
インテリアは大きく変わらないがハンドルが上級モデルと同じデザインに

 クリスチャン・フルー氏はさらに付け加える。

 「Cクラスのメインマーケットは現在、中国にあります。そしてアメリカがそれに次いでいます。その他の国ではボディタイプ別にニーズが異なっており、例えばセダンは中国に専用のロングホイールベースがあるほか、イギリスでも好調です。またステーションワゴンはドイツとイギリスと日本で人気のあるモデルです。そんな具合にして地域性もありますが、間違いないのは世界中でこのクラスのマーケットのリーダーとなっていること。それだけに今回は、さらなる進化をあらゆる面に盛り込みました」

 と語る。今後登場するだろう2.0LのEQブーストも含めて、日本に上陸するのが待ち遠しい一台である。

リアではテールレンズのデザインやマフラーが変更された
リアではテールレンズのデザインやマフラーが変更された
自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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