Yahoo!ニュース

【固有の価値あり】レクサスLC  90/100点【河口まなぶ新車レビュー2017】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

【成り立ち】新世代のFRプラットフォーム、「GA-L」を採用

レクサスが送り出したフラッグシップクーペ「LC」は、新世代のFRプラットフォームである「GA-L」を採用したのが特徴。このプラットフォームは新開発された上級モデル用のもので、今年登場する同ブランドのフラッグシップサルーンである「LS」も共用する予定となっている。それはつまり、このブランドにとって最も重要なモデルを位置づける”基礎”だといえる。

というのもレクサスにとっての「LS」とは、1989年にアメリカで立ち上がったトヨタの高級ブランドの、初めてにして象徴であるモデル。そしてこのモデルはトヨタにとってもこれまでに手をつけたことのなかった領域に踏み入れたモデルであったと同時に、登場後は世界中の高級車と高級ブランドが脅威を覚えたモデルでもあった。そうした背景を持つモデルの最新版、となれば、おのずと注力して開発されることはもちろん、世界中から注目されるものにもなる。そして同時に、そのブランドがどのくらいのレベルにあるのか? をライバルはもちろん、ユーザーにも図られるものだともいえる。

つまり、現在の「レクサス」というブランドの表現そのものの源、といって良いだろう。

フラッグシップサルーンであるLSは既に、モーターショーではLS500、LS500hが発表されており、先日のNYショーでもFスポーツと呼ばれるスポーツグレードが発表されて、もはや登場も秒読み段階にある。

そうした中にあってひと足先に世に送り出されたLCは、ニューモデルとしての注目以上に、LSを計る存在でもあるわけだ。

実際に、LC500は5.0LのV8に10速ATを採用し、LC500hが3.5LのV6+モーターにマルチステージハイブリッドシステムを採用する構成もLSと同様となっている。

その意味ではLCもまたLS同様に、現在のこのブランドの表現そのものといえるわけだ。

【デザイン:85/100点】他とは違う、を突き詰める

レクサスのデザインはハッキリといえば、既存の高級ブランドに対して異なる価値観を見出すために、その方向性を転々と変えてきた歴史だといえる。このブランドが2005年に日本に展開された当時、デザインは日本ならではの奥ゆかしさを標榜していた。欧米の押し出しの強さに対抗する一歩引いて表現する和の精神のようなものを謳っていた。しかし、それでは周りと比べて埋没し、ひいては見つけてもらえないと感じたのか、デザインは一転押し出しの強い方向性を求めるようになる。

画像

そうして現在のスピンドルグリルをはじめとしたデザインが形成された。LCはこれまでのスピンドルグリルを用いてきたモデルの中ではもっともそれがしっくりと来るように感じる。またこれまでのモデルで展開されてきた直線的なラインの構成から一歩抜け出し、オーガニックな表現も融合されているように思える。この辺りは新時代のレクサスにおける変化と捉えて良いだろう。

一方でインテリアにおいても、センターコンソール周りやドアライニング周りにオーガニックな表現が用いられると同時に、作り込みの丁寧さを感じさせるようなディテールが散りばめられている。また、ステアリングやシフトノブなどのレザーも極めて上質なものをもちいてステッチ等にもしっかりと気を使ったことが見てとれる。

画像

最近ではメーター周りは全面液晶パネルとするなどの手法が流行となっていることから考えれば、LCのメーター周りは液晶こそ入るもののメーターリングが残されるなどして、ややクラシックな雰囲気を漂わせている。またアナログ時計をあえて設置した辺りは、高級ブランドの高級車を物語る要素だが、こうした時計等には一貫したデザインや配置が求められるわけで、その点について今後を見越しているかどうかがハッキリしない。

またセンターコンソールには、大型のタッチ式パッドがおかれて、これを使ってナビ画面やメニューを操作するのだが、決まった形状のものを動かすのではなく広い範囲にあるパッドのどこかに触れてどこかまで動かすという操作はUI的にイマイチ馴染まない。ならばパッド前方にある円形コントローラーでも操作できるか? と思うのだが、こちらで操作する範囲は限定される。

最近の高級モデルでは、パッド、円形コントローラー、音声入力と様々な入力方式が用意されており、これらすべてを備えていて、どの方式を選んでもメニューが進められるものがある。現在考えられうる中でベストなUIはこの、3ウェイくらいの方式をどこからでも乗り換え可能で操作できるようにするものだろう。もっともこの分野は正直いって、スマホのUIに大きく劣るので、今後の自動車メーカーの展開がきになるところだが…。

それはさておき、デザイン的にはスピンドルグリルを備えてからの第二章が始まったという感じを受ける。またここにオーガニックな要素やフューチャリスティックな要素も加わることで、確かにLCは他にないレクサスらしさをもったデザインになってきていると感じる。また同時に、今後登場するLSと併せて、どのような世界観を構築していくのかにも注目が集まる。

【走り:90/100点】輸入車とは異なる、スッキリとした乗り味走り味も

試乗動画を参照していただくのが早いが、5.0LのV8エンジンを搭載したLC500、3.5LのV6とマルチステージハイブリッドを搭載したLC500hの2台に乗った総合的な印象としては、輸入車とは異なるスッキリした乗り味走り味が構築されている、とお伝えできる。いわゆるドイツ系の高級ブランドのモデル群は、多少の違いこそあれど基本的には走りに重厚な感覚があり、操作等に対する反応には一様に確かさが強く表現されているものが多い。これに対してレクサスLCの乗り味走り味は、まず走りのあらゆる面がスッキリとしたフィーリングに支配されているのが印象的な部分だ。

21インチのランフラットタイヤであるミシュラン・パイロット・スーパースポーツを履くにも関わらず、まっすぐ走っている時には路面を凹凸をほとんど感じさせず、ラグジュアリークーペに相応しい乗り心地の良さを伝える。一方でハンドルを操作しても、クルマが素直にピタリと動く感覚が印象的。決して過敏すぎず、決してダルすぎずが実現されている。そんな風にまっすぐはもちろん、ハンドルを切った印象、そしてそれに反応してクルマが動く様、そうしたひとつひとつに清々しい感覚がある。

5.0LのV8もスポーツモードにするとサウンドこそ刺激的なものを伝えるが、そこから生み出されるトルクが10速ATに伝わって路面に伝えられる様子はやはりスッキリ感が強いもので、パワフルでグイグイ加速するというよりも、パワフルさを可能な限り滑らかに伝えて気持ち良い加速とする、というような感覚がある。特に10速ATが組み合わせられたことで、変速が滑らかなのもその要因のひとつである。

一方のハイブリッドモデルは3.5LのV6とモーターの組み合わせで、さらに滑らかな走り出しに拍車がかかったものとなる。モーターならではの初期からの力強いけれど滑らかな加速にエンジンの力が加わって、実に伸びやかな加速が生まれていく。トヨタのハイブリッドはアクセルを踏み込むとエンジン回転だけが上がって加速が後からついてくる、いわゆる「ゴムバンドフィール」がマイナス点だったが、今回のマルチステージハイブリッドは新機構でその辺りを解消したのが特徴。実際に走り出して加速してみると、確かにゴムバンドフィールも解消されており、ハイブリッドなのに気持ち良い加速が生まれていたのだった。

気になる点といえばLCはどちらのモデルも特に街中での乗り味がスッキリしていて印象的だが、高速道路等に入るともう少し安定を感じさせるフィーリングが欲しいと思える面もある。実際高速域での直進性が悪いわけではないのだが、まっすぐ走っているフィーリングを伝える術がわずかに足りない感じだ。ステアリングに手を添えていても、どこまでもビシッと走っていく…そうした印象を与えることは、このクラスの高級クーペには当然のように求められることだろう。

またハイブリッドモデルは、ワインディング等でアクセルを踏み込むような高回転を多用するような走りをすると、いくらマルチステージハイブリッドでも反応が遅れる部分が出てくるが、これは致し方ないだろう。それよりもハイブリッドながら、気持ち良いペースで違和感なく走れるレベルを構築できている点を評価したいと思う。

またワインディングではハンドリングに関しても実に滑らかな、まさにシームレスといった表現が相応しいクルマの動きが感じられたのもポイントで、カーブを曲がる時には操作に対して非常にスッキリと鼻先が向きを変え、路面にピタリと貼り付いてスムーズにコーナリングしていく。Sパッケージではリアステア機構を備えており、さらにそれが顕著。ただし感度の高い人は、このリアステアによるコーナリングにわずかな違和感を覚えるかもしれない。とはいえ、この辺りの独特の味わいにも「レクサスらしさ」は生まれているように思えた。

キーワードはスッキリ。そしてシームレスな感覚が印象的と考えると、その走りに関してはハイブリッドの方が、よりレクサスらしい世界観を表現しているように思えたのだった。

【装備:90/100点】装備は充実しているが…

自動ブレーキはもちろんのこと、アダプティブクルーズコントロールもしっかりと全車速対応をしたレクサスセーフティ+は、イマドキの安全装備のトレンドは全て備えている。ただレーンキーピングアシストでは、ステアリングをクルマの側で操作して車線逸脱抑制や、レーダークルーズコントロール時の車線維持支援を行うが、こちらは最近の他のモデルと比べると弱めで、車線と車線の間をいったりきたり…となるシーンを時たま見受けるのが気になった。

またテレマティクス周りも他のモデル同様にG-Linkを使うことになるが、この辺りでも新たなレクサスとしてのイノベーションがあってもよかったように思える。せっかくの新フラッグシップモデルなのだから、この辺りでスマホとの親和性の高いUIを盛り込んだり、アプリを使ってコネクティビティを高めたり…という点を期待したが、その辺りに関しては特に先進的な感覚はない。

【使い勝手:80/100点】細かなおもてなしが必要か?

使い勝手の面でまず気になったのは、サンバイザーの上下方向が短く普通に使うと直射日光が防げないことがあること。特に西日となった時には確実にカバーできないのが残念で、日光を避けるにはサンバイザーを出してシートの高さを上げていかないとならないのだ。ちなみに筆者はかなり座高が高くてこの状態だから、通常だとかなりの人がバイザーを出した時に日光を防げないことになる。

また乗り降りで気になったのはシートベルトの引き出しが困難なこと。シートベルトがボディ側のBピラー後方から出て来るため、シートに座って体を捻ったり、無理な姿勢を強いられるのが残念。この手のラグジュアリークーペならばシート内蔵型にするのがスマート。現状ではシートバック横にシートベルトを留めておけるバンドが付いているが、後席へのアクセス時には邪魔になるわけで…と考えるとスマートさを削ぐ要因になってしまい残念である。

非常に細かな点を指摘したが、このあたりは”おもてなし”の精神を得意とする日本のブランドとしても押さえておきたいとこだろう。

【価格:85/100点】1300万円〜は安い? 高い?

話題のクルマだけに、Youtube動画へのアクセス数も非常に高く、コメントもかなり多いのがLCの特徴。そして書き込みの中に比較的多く見受けられるのが1300万円からのその価格が高いか安いかに関するものだ。

今回、元町工場での実際の生産現場を見学させてもらったが、そこでの作りを見ていると非常に丁寧に時間をかけて作っており、この点においてはいわゆる量産車とは確実に一線を画す手間ヒマがかけられていることがわかる。また実際に使われている素材の品質や作り込み、塗装の種類などに関しても確かに高級車に相応しい内容となっている。

加えて性能に関しても、5.0LのV8と10速ATを搭載することや3.5LのV6とマルチステージハイブリッドを搭載すること。それらお互いの動力性能や燃費性能の高さ等を鑑みても、なるほどこの価格級のものになっているといえる。

そしてブランド性や存在感、実際の走りから得られるフィーリングなど、様々な要素をみれば1300万円からの価格というのは決して高くはないといえるだろう。

【まとめ:90/100点】あらゆる面で高い潜在能力。それを今後どう育てるのか?

2日間かけて、のべ3台のLCを走らせたが、総じて見るとあらゆる面で高い潜在能力を備えたモデルだと感じた。5.0LのV8エンジンは、この先の時代においては何か別のユニットを用意する必要があると思うが、その辺りにも一つの策があれば、将来のLCをより高く評価されるようになるだろう。またハイブリッドに関しては、筆者としてはレクサスらしさを体現するモデルと感じており、このモデルこそが今後のレクサスの方向性を示すモデルになるといえる。

そうしたことを考えた時に、重要なのは今後このクルマをどう育てていくか? ということでもある。先に話したエンジンやハイブリッドを磨きあげると同時にその方向性に応じた味付けをさらに分かりやすく表現することはもちろん、走行性能に関しても高いポテンシャルがあるだけに、もっと良い乗り味走り味を生み出せる可能性を大いに秘めている。そうした背景を、どのような料理の仕方によって、この先の進化につなげるかがキモだといえる。

まずLCというモデルそのものを熟成させるために、イヤーモデル制をとって進化させるのか(およびそれをキッチリと外にPRしていくのか)? あるいは従来とは異なる進化のさせ方があるのか? それともこの点は従来の手法のままなのか? 新技術やその他の投入は? など様々に気になるところがある。また走りだけでなく、コネクティビティやその他の通信系の熟成や進化はどうするのか? も気になるところだ。

アメリカで誕生した新たな高級車ブランドは、日本での展開を経て、さらに今年このLCから新たなフェーズが始まるのだといえる。そう考えると、総じてデキの良い潜在能力の高い1台だけに、余計に細かな部分の修正や進化に関しての今後が気になるのである。

※各項目の採点は、河口まなぶ個人による主観的なものです。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

河口まなぶの最近の記事