【着実な進化】スズキ・スイフト 78/100点【河口まなぶ新車レビュー2017】

【2017年2月28日:追記:採点を星の数から100点満点に変更しました。】

【成り立ち】新プラットフォーム「HEARTECT」を採用

スズキ・スイフトは先々代が登場した際、日本のコンパクトカー界に衝撃を与えた。当時の日本のコンパクトカーとは一線を画すデザインと走りは、第二の故郷である欧州での販売を見据えたもので、その欧州テイストは日本ではライバルにない独自の商品性となった。その後、先代モデルを経ての登場となるが、今回は新たなプラットフォームである「HEARTECT」を採用。軽量・高剛性を実現したこのプラットフォームによって、従来比で最大120kgの軽量化を果たしたのがトピックだ。

搭載されるパワーユニットも様々に用意。ベーシックな1.2Lの4気筒エンジンをはじめとして、ハイブリッドでは1.2L4気筒に小さなモーターを組み合わせたマイルド・ハイブリッドとして、最も燃費に優れるモデルは27.4km/Lを実現している。RStと呼ばれるモデルでは、1.0L直列3気筒ターボ「ブースタージェット」に6速ATを組み合わせて動力性能と上質さを狙うなどしている。1.2LではCVTだけでなく、MT搭載モデルを未だ残しているところが走り好きにとっての頼みの綱となっている。また後述する安全装備でも大幅な進化を遂げたのも特徴だ。

【デザイン:80/100点】”スイフトらしさ”に欧州のデザイン・トレンドをプラス

先々代のスイフトが欧州テイストを巧みに盛り込んで国内のライバルにはない雰囲気を手にいれ、先代はそれを継承したデザインを採用した。そうした経緯からすると今回の新型は、先々代、先代で採用してきた”らしさ”を残しつつも、ディテールでは欧州のデザイン・トレンドをしっかり盛り込むことで彼の地で埋没しないような逞しさやスポーティさを表現した。サイドから見たシルエットは、先々代~先代から受け継ぐ”らしさ”だが、ヘッドランプからグリル周り、フロントバンパー内の切り欠き、前後フェンダーのショルダーの感じ、Cピラーに黒いパーツを与えることでルーフが浮いて見えるフローティング手法など、あらゆる部分に最近のデザイン・トレンドが見て取れる。

またフロントグリルが存在感を増したが、これはデザイン要素以上に歩行者保護対応が強い。最近の新車は歩行者保護要件をクリアするため、なるべくグリルを垂直化して、万が一歩行者をはねた場合ボンネット上へ上手く乗せて衝撃吸収を行う設計が主流。そうした要件をクリアしつつ、デザイン要素を取り入れたのがこの顔というわけだ。

一方インテリアも、操作スイッチを盛り込んだ新デザインのステアリングに始まり、メーターはヴェゼルまでしっかりとデザイン。エアコン吹き出し口等まで徹底して質感を追求するなど、コストが厳しい中にあって最新モデルにふさわしい造形とクオリティを実現している。

総じてみると、デザインには先々代のようなインパクトはなくなり、デザインする側にも手慣れた感を覚えるわけだが、それでもやはりライバルとの勝負をしっかり考えた上での秀作であることには変わりはない。つまり、インパクトで勝負するのではなく押さえるトレンドをきっちり押さえて一定以上の商品性を決して外さないという、プロが作るプロっぽいデザイン。飛び道具はないが隅々まで行き届いているデザインともいえる。よって周りと比べてもレベルの高さが光る。

【走り:85/100点】先々代モデルの”走りの良さ”が復活?

先々代モデルを高く評価した理由は、当時の日本のコンパクトカーとは真逆の攻めの走りを実現したから。ヴィッツやフィットは最終的にハンドル切っても曲がらない安定方向にしつけたハンドリングだが、スイフトは最後の最後までドライバーの操作重視で姿勢をいかようにでも変えられるオウンリスク型の欧州的ハンドリングだった。なので街中で運転しても、「なんか楽しい」と感じるところが最大の特徴。それが先代では影を潜め、安定志向のハンドリングになった。

それを受けての新型はまず、最大120kgの軽量化が効いたか走り全体に軽やかさが感じられるものに。この辺りに、先々代モデルの走りの良さが復活したような感がある。ベーシックなXLグレードはとても軽やかな操作感と走りで、イタリアやフランスのコンパクトカーのような雰囲気。またRSグレードは、XLなどに比べると適度にスポーティさが増している。が、過度にスポーティなのではなく、ほんのりとスポーティな風味が効いている仕立てなので、乗り心地の良さなど快適性は担保される。なぜならこのRSのセッティングは、欧州仕様におけるノーマルモデルのセッティングと同じだから。つまり走りの良さが問われる欧州でデイリーユースされる味付けを、日本仕様のRSとしているのだ。

走りがもっとも楽しいのはRSの5MTモデル。その軽やかな乗り味と適度なスポーティさと快適性の実現は、フランスのコンパクトハッチを思わせる走りの楽しさがある。一方で1.0Lターボ6ATのRStは、エンジンやトレンスミッションの存在感が主張しており、ややドイツ系のコンパクトを思わせる走り。

総じてみると、その走りはマツダのデミオと双璧をなす日本コンパクト界「最後の砦」といえる優れたもの。この2台から走りの良さが失われたら、日本のコンパクトもいよいよアブないと思って良い。その意味では、未だホッとできる走りがしっかりと作られている。

【装備:75/100点】自動ブレーキはもちろん、アダプティブクルーズコントロールを採用

装備面で注目は、スズキ初の装備として、単眼カメラとレーザーレーダーによる衝突被害軽減システム「デュアルセンサーブレーキサポート」を採用したこと。他にも周囲の状況に合わせて自動的にハイビームとロービームを切り替えるハイビームアシストも採用。そして前走車に追従して走るアダプティブクルーズコントロールも採用したが、これは残念ながら全車速対応型ではなく40km/h以下でシステムが解除されるタイプだ。ただしこのクラスにおいてアダプティブクルーズコントロールを用意した点は評価できる。また誤発進抑制機能や車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能など、ここまで記した装備はオプションのセーフティパッケージ装着で用意される。ちなみに燃費は1.2LのCVTが23.4km/L(XGグレード)、ハイブリッドが27.4km/Lとなっており、1.0Lターボは20.0km/Lとなっている。

【使い勝手:70/100点】新プラットフォーム採用で向上したはずだが…

新プラットフォームを採用したことによって、運転席調整範囲の拡大やラゲッジスペースの拡大および荷室開口地上高を80mm低くするなど、あらゆる部分に使い勝手の向上を図っているが、先代比で見違えるほど向上したわけではない。逆にリアドア等はドアノブをCピラー内に埋め込むデザイン処理等によって、開閉の時につかみづらくなるなどしているのも実際だ。というわけで使い勝手はコンパクト・ハッチバックとして常識的なレベルに止まる。この辺りを求めるなら、フィットなどの方が当たり前だが遥かに上をいく。

【価格:80/100点】価格自体にはインパクトはナシ

ある程度装備のあるベーシックグレードのXLのCVT2WDモデルで146万3400円から。ライバルと比べるとほぼイコールか、セーフティパッケージで装着される要素が多い分だけコスパがわずかに高い…という感覚だ。ハイブリッドRSは、燃費と走りの両立モデルで、これは他にあまりない選択肢だが169万1280円となり、デミオ13Sと比べるとお買い得感はある。とはいえ、周りと比べて大幅に安いという感じはそれほどないわけで、あとはクルマ自体にいかに魅力を感じるか…という部分でのチョイスとなるだろう。価格だけでみれば、ヴィッツやフィットは相変わらずのコスパだ。

【まとめ:78/100点】素直に表現されたクルマの魅力

様々な部分に目を通して感じるのは、スイフトというのはイマドキにしては珍しくクルマの魅力を素直に表現した商品、ということだ。そしてこれはとりもなおさず、欧州等を意識したグローバル商品だからということに他ならない。つまり世界を見て、欧州を見た時には、やはりこの手にはいわゆるクルマらしい魅力が求められる。それがゆえのデザインであり、走りなのである。事実、昨年のパリショーで発表された日産のマイクラ(日本名マーチ)も、デザインと走りで直球ど真ん中の勝負に出た。世界で見ると、そういうカテゴリーなのだ。

だから、それはともすれば、日本市場においてはいわゆる売れ筋とはちょっと違った内容を持つ商品とも考えられる。日本市場ではデザイン、走りよりも、室内の広さや燃費といったところが重視されるわけで、その点においてはフィットのようなクルマの方が人気も高いし、アクアのような燃費イメージのクルマがもてはやされる。または軽自動車のハイトワゴン系にシフトする…という感じになる。

そうした中で見ると、スイフトというのはマツダ・デミオとともにベーシックなスタイルの定番商品だが、一方でクルマとしての魅力を忘れていない2台だともいえる。なので”意識的に選ぶ人”にとっては、いわゆる日本の人気車とはれっきとして異なる魅力を持つ存在になる。燃費や広さとは違う、デザインや走りで満足できる商品でもあるのだ。そしてそうした視点で見ると、素直に魅力あるクルマだなと筆者も感じるし、高く評価できる。たとえデイリーユースする存在だったとしても、そこにデザインや走りなどの”クルマらしさ”を求めるならば満足できる商品だろう。

※各項目の採点は、河口まなぶ個人による主観的なものです。