2015年6月13日。元F1ドライバーであり、ル・マンでもトヨタを駆って活躍した片山右京氏もまた、ル・マン24時間レースが開催されるサルト・サーキットを訪れた。

氏はル・マン24時間レースの主催者であるACOから招かれて、1999年に自らが2位を獲得したトヨタTS020を、決勝前のデモンストレーションランにおいて走らせたからだ。久々のル・マンに、氏は

「やっぱりル・マンは特別な場所だね。サーキットに近づくだけで空気が違うのが分かる。オーラみたいなものを、この場所には感じる」

と、改めてル・マンという場所の偉大さを表現する。そして久々にトヨタTS020を走らせての感想を聞いてみると、

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「昨日もチェック走行をしたのだけど、僕ももういい年だし、路面もウェットだったし…なんて思っていたけれど、走り出した瞬間に何かこう頭の中の回路が切り替わって、いろいろなものがフラッシュバックしてあらゆるものが蘇ってきた感じでちょっとダメだ、と思った」

と、嬉しそうに話す。ダメ、というのは自身の体に染み込んだ、レーシングドライバーとしての性を感じた、という意味だ。

「瞬間的にパニックになったような感じだった。短い時間の中で記憶が急速に戻ってきて、昔のスイッチ操作なんかも迷うことなく行えて、そうしたらアドレナリンが出てきて、久しぶりに『面白い』と思えたし、レーシングドライバーとしてのスイッチが入るかのような感じだった」

とはいえ氏は1999年、自らがこのTS020で走行中にリアタイヤがバーストし、勝利が手からこぼれ落ちるという苦い経験をしている。

「あと残り約50分だったけどね」

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その時の2位から後も、トヨタとしての最上位は2位のままだ。そしてもちろん今回現場に来ている氏も、トヨタが頂点に輝くことに期待を寄せている。

「佐藤代表も言っていたけれど、昔も今も目標は一度も変わっていないんだよね。常に勝つためにここに来ている。今年のトヨタはとにかくノートラブルでミスなく周回を重ねて我慢との戦いになる。けれど、そうしてラストの4時間辺りを迎えた時に、いるべきところにいればチャンスは生まれてくる」

そうして今もなお続くトヨタの挑戦を見守りつつ、最後にそっとこう言った。

「ル・マン24時間を走ったドライバーは皆、これを超えるレースはない、っていう。自分も朝のユノディエールを走っている時にも感じたことだし、ゴールした時にもそう感じた。だから本当にエクスキューズでなく、ル・マンでは完走した者が皆、勝者。ゴールまで行けば必ず、良いことがあるよ」

世界の頂点を見てきた男はそうして、トヨタの挑戦を後押ししたのだった。