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3対0で勝った。けれど……何も言えない。――日本×グアテマラ

川端康生フリーライター

どんな試合にも意味はある。もちろん。

けれど――。

両チームの監督のコメントが「どんな試合」だったかを端的に表している。

「日本がサッカー大国であり、強豪国であるという私の考えが正しかったことが証明された試合だった。ボールの扱い方、戦術……すべてにおいて日本は我々を上回っていた。日本と同じレベルでプレーするには我々には足りないことがたくさんある」(グアテマラ代表監督)

「もちろんグアテマラは格下の相手だった。格上のチームが相手でも今日のようにプレーできることを期待している」(日本代表監督)

力の差があり過ぎた

サッカーは極めて相対的な競技である。(勝敗だけでなく)個々の選手のパフォーマンスさえも相手との力関係によって変わる。

陸上や水泳のようなタイム競技では、速い選手はどんなレースであっても速い。順位だけでなく、タイムもその選手の実力を反映した記録が出る。

野球もそうだ。150キロのボールを投げられる投手は、相手が強かろうが弱かろうが、論理的には150キロのボールを投げることができる(打たれるかどうかは相手によるが)。

サッカーではそうはいかない。

相手の方が強ければ、たとえばドリブルが得意な選手であってもドリブルを仕掛けることすらできなくなってしまう。

ディフェンスだってそうだ。守れるかどうか、抑えられるかどうかは、根源的にあ相手との力関係である。J1で最多失点を喫しているチームであっても対戦相手がショボければ無失点で完封することができるだろうし、J1で守備に追われているチームであって攻撃サッカーを披露して大勝するかもしれない。

ショボい、などと書いてしまった。

でも、グアテマラ代表の監督が正直に話したように、この夜長居スタジアムで戦った2チームには実力差、それもかなりの差があった。

せめてグアテマラ代表が鋭いカウンターを持っていチームだったら、せめてグアテマラ代表が強靭なフィジカルを備えたチームだったら、何らかの評価を下すことができたかもしれない。

けれど――。

評価はガーナ戦まで持ち越し

このところ失点の多かった日本代表が、久々に完封勝利を飾った。

90分を0失点で終えたという結果だけでなく、選手たちの守備意識の高さは確かにうかがえた(テレビに映ったかどうかわからないが、流れの中で、プレーとプレーのインターバルに、選手たちは「守備」を意識した言動をしばしばとっていた)。

攻撃においても、パスはよく回り、ゴールも3つ生まれた。

しかし、相手との力関係があまりにアンバランスだった。一方的に攻め続け、しかもカウンターを浴びることもなく、だから一方的に押し込み、攻撃を繰り返すことができ、チャンスは生まれ、守備ラインが危険に直面することもなく……。

何かを判断するには向かない試合だったと思う。

選手たちが守備の意識を強く持ち続けていたのは確かだが(前線からのディフェンスも効いていた)、無失点で抑えられたのはやはり相手の力関係の結果だ。少なくともこのゲームをもって「ディフェンスの立て直しができた」と言うことはとてもできない。

あえてこのゲームで見えたことを探すなら、ザッケローニ監督が正直に語った通り、「たくさんチャンスを作ったし、しかしいつも通りゴール前での決定力を欠いた」ことである(香川の適正についても感じることはあった)。

無論、「サッカー」だから3点もとれば十分ではあるが、前のうちに得点を奪えなかったのはマズかった。力関係がもう少し拮抗していれば、押しているチームがゴールを決められないうちに、ぼろっと失点して……という「サッカー」的な結末を心配しなければならない展開だった。

もちろん、どんな試合にも意味はある。今日のゲームにも、チーム作りという面では意味はあっただろう。

しかし、この試合をもって何かを判断することは難しい。日本代表について評価を下すのは、火曜のガーナ戦まで持ち越しである。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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