「逃げ恥」は設定が絶妙。「みくり=妹、平匡=一人っ子」だから成立!?

(写真:MANTAN/アフロ)

連続ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)を毎週楽しみに見ています。ガッキーはかわいいし、展開はきゅんきゅんするし、で、久しぶりに恋愛ドラマを楽しんでいます。

私はこの1年ほど「きょうだい型」をテーマにした本にかかりっきりでした。そのため、今では、すべてをそのフレームで見るクセがついてしまいました。

新たに知り合う人、知り合う人が、長子・末子・中間子・一人っ子のどのきょうだい構成なのか、気になって仕方ないのです。それはドラマの登場人物も例外ではありません。

というわけで、今回、人気ドラマ「逃げ恥」の魅力を「きょうだい」という角度から分析してみたいと思います。

いま日本で一番有名な一人っ子

星野源演じる平匡は、いま日本で一番有名な一人っ子でしょう。自分のテリトリーを大事に守り、ペースを乱されるのが嫌い。コツコツ予定通りに仕事を進めるのが好きな性格といい、SEという職業といい、実に一人っ子的です。

一人っ子は、小さいころから親の愛情をたっぷりと注がれ、まっすぐに育ちます。自尊感情も高く、やりたいことに対して前向きで貪欲。他人との距離の取り方は独特ですが、根も素直だし、親思いな一面もあります。

ところが、常識破りの自分なりのマイルールを設定する傾向があり、それがしばしば周りを驚かせることに。

物語の中でもその一人っ子っぽさは遺憾なく発揮されていて、「従業員として妻を雇うコストを計算」「契約書を作っての事実婚」という発想は、一人っ子ならではのものでしょう。

損得勘定に長けた末子

いっぽう、新垣結衣演じるみくりは、上に兄がいる末子です。

末子は、生まれた時から上にきょうだいがいる状態で生を受けます。そのため、親から100%愛情をかけられることはなく、うける期待やプレッシャーも長子ほどではありません。

親や親戚は、いちばん下のかわいい子ということで、とことん愛玩します。兄や姉も下の子の面倒を見るので、本人はどこか他力本願な性格に。いつもニコニコと笑っていれば、周囲が何とかしてくれるという信念を備えた大人に成長します。

兄や姉という前例を参考にしながら要領よくものごとをこなすのは上手。結果的に、損得勘定をいつも気にする、合理的でクレバーな性格も持ち合わせることになります。

そういう目で見ると、空気を読んで平匡のテリトリーを邪魔しないだけでなく、「お互いにメリットがある契約結婚」という発想は実に末子的です。

これが仮に、きまじめで責任感が強くモラルにうるさい長子であれば、「いいとこ取りの事実婚」なんていう発想は出てきません。

鷹揚でおせっかいな伯母と兄

さて、長子といえば、このドラマの陰の主役と言ってもいいのが石田ゆり子演じる、みくりの伯母・百合ちゃんでしょう。最も注目している役柄です。

百合ちゃんはみくりの母の姉で、これまた実に長子的な性格。鷹揚でぼーっとしているくせに、人のことにはおせっかいを焼かずにはいられません。

これは同じ「おばさん」でも「叔母=母の妹」ではありえないこと。妹(末子)は、姉(長子)と違って、わざわざ姪に干渉したり、おせっかいを焼いたりはしないのです。

結婚生活に口を出し、温泉旅行をプレゼントし、なにかといっては新婚夫婦にかまおうとする(愛情たっぷりに)のは、長子(姉)ならではの責任感です。

ちなみに、長子の欠点としてはデリカシーがないことが挙げられます。「世の中の人は(家族はとくに)すべて自分の手下」ぐらいに思っている彼ら・彼女たちは、プライバシーに構わずずかずかと踏み込みます。それはまさに、おせっかいな性格と裏表になっているわけです。

そういう意味では、みくりの兄・ちがやなども、鷹揚でデリカシーのない長子として描かれています。未婚の百合ちゃんに対して平気で地雷を踏んだり、無神経なことを平気で言いつのって妻から胸ぐらをつかまれたりするさまは、ストーリーにとって絶妙なスパイスとして効いています。

きょうだいと家族の物語

と、このように、逃げ恥は「きょうだい型」の視点から見ても、実によく練られた人物相関設定。

人の気持ちに関心も知識もない一人っ子が、徐々に人に心を開いていく(頼りないけど、素直で優しい)

当初は上手に距離感を取っていた末っ子が、恋心によって気持ちをかき乱されていく(器用だけど、人生には不器用)

とことん包容力のある長子は、常に温かく二人を見つめ、守る(美魔女のように不自然ではないナチュラルさ、けれどやっぱりこんなきれいなアラフィフは普通いない、つまり、ドラマとしての”夢”がある石田ゆり子の美貌)

どれをとっても、とても絶妙なキャラクターバランスが視聴者の共感を呼ぶし、それを裏打ちするようにきょうだい型も完璧に設定されている。脚本はもとより原作マンガの完成度の高さには、うなるしかありません。

「そんなの当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、同じく話題となったドラマ「校閲ガール」では、テーマが仕事ということもあり、そこまで踏み込まれていません。主人公・悦子のきょうだい構成や生まれ育ちは最後まで謎でした。

家族を描く視点も、幸人と本郷先生が実は父子だったという、既視感のあるもの。もちろんそれが悪いというわけではなく、要はどのテーマにフォーカスしているか、ということです。

一人っ子と末子の相性はよくない!?

「逃げ恥」は契約結婚をテーマとした、家族の物語。となれば、きょうだい構成についてもきちんと考察され、上手に設定されているということです。

ちなみに、私の本でも指摘していることですが、本来、末子と一人っ子の相性はそれほどよいものではありません。

下にきょうだいがいないことから来るマイペースさは共通しているものの、ノリが命の末子は、空気を読まない言動(あくまで末子から見ればということですが)を繰り返す一人っ子はむしろ苦手。

逆に、一人っ子からすれば、人の心に敏感すぎる末子の言動は理解できないでしょう。

その証拠に、これまでのところふたりはすれ違いを繰り返しています。もちろんそれもまた、恋が燃え上がるために必要な障害なわけですが・・・。

以上、恋ダンスでもなく、ガッキーや星野源のかわいさでもない、「きょうだい」というニッチな角度から「逃げ恥」の魅力に迫ってみました。

ストーリーはいよいよクライマックス。ドラマは12月20日(火)で最終回ですし、原作漫画も12月25日(日)発売号で最終回とのこと。いよいよもって、目が離せません。

【作家・心理カウンセラー 五百田 達成】

《15万部「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」》《35万部「察しない男 説明しない女」》角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て独立。「男女コミュニケーション」「きょうだい型(生まれ順)性格分析」「ことばと伝え方とSNS」をテーマに執筆・講演。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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