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ついに公開、新作「スターウォーズ」。「騒いで観る映画」は日本に根付くか。

五百田達成作家・心理カウンセラー
(写真:アフロ)

12月18日に、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」が日本で公開。2015年は、この「スターウォーズ」や、作中の設定である2015年を迎えたということでファンが熱狂した「バックトゥザフューチャー」など、話題作が目白押しでした。

さらに、こうした映画では、映画に使われた美術・衣装などの特別展示イベントが行われるなど各地で、ブームは映画館を出て大きな盛り上がりに。実際身の回りでも、映画のファンというよりは、ただの行楽シーズンのレジャーとして、こうしたイベントに足を運ぶ姿が散見されました。

その他、大規模な体験型映画鑑賞イベントも、国内・海外で話題になりつつあります。もともと、マナーを守り、上品に静かに映画を観るだけだった日本において、映画は観るだけではなく体感するものに、変わりつつあるのでしょうか?

みんなで騒いで観る映画

一般的な日本の映画館での鑑賞スタイルといえば、劇場に入ったら静かに席に着き、コミカルなシーンが登場しても控えめに笑い声を出し、感動の涙を出しても声を押し殺して泣く、という至って静かなもの。

アメリカでは、大声で泣き、笑い、皆で盛り上がりながら映画を観る習慣があると聞きますが、日本人にとってそうした鑑賞スタイルは一般的ではありません。

そんな中、この数年「アナと雪の女王」「キングスマン」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」といった作品では、観客一体となって楽しむ鑑賞イベントが頻繁に開催されました。

劇中歌を観客全員で合唱したり、ドレスコードを守ってパーティースタイルで鑑賞したり、大絶叫しながら劇中に登場するポーズを皆で取ったり……。

このように、感情を表現しながらみんなで騒ぎながら映画を観る、というスタイルが日本でも始まりつつあります。

日本人が「騒ぎ慣れ」始めた?

とはいえ、これらはすべての劇場で自発的に起こったものではなく、映画公開を記念したプロモーションイベントとして行われたものがほとんど。それでも、実際に多くの人がそこへ駆けつけて、みんなで興奮を分かち合ったわけです。

近年のハロウィンブームにも代表されるように、今や日本では、機会や言い訳さえあれば、コスプレイベントやパーティー風のイベントが企画されています。メディア主導とはいえ、実際に多くの日本人が「騒ぎ慣れ」始めたのは、間違いのないところでしょう。

ハロウィンでも、クリスマスでも、カラーランでも、映画公開でも、とにかくなんでもいいから、みんなで集まって楽しくワイワイ騒ぎたい。

ええじゃないか、ええじゃないか。同じアホなら、踊らにゃ損損。

そういう空気が、この国にできあがりつつあることを受けての、こうしたプロモーションイベントの成功といえるでしょう。

「SNS」と「ライブ」がキーワード

こうしたイベントの流行の理由は「SNS」と「ライブ」。

注目のイベントにいち早く応募し、パーティーに参加している自分と仲間の姿をSNSに投稿することは、周囲へのセンスアピールとしては、もってこいです。

また近年、「CDは売れない。ライブ・フェスは人が入る」という音楽界のトレンドに象徴されるように、「ライブ」の価値が見直されています。逆に言うと、ネットやyoutubeのおかげで、アーカイブ・保存データとしてのCDやDVDの相対的価値が落ちたということ。

いまや人は「体験」「時間」「友との大切な時間」にお金と時間を落とす、というわけです。

※ちなみに先日訪れた映画のプレミア公開イベントでは、冒頭に司会が「これから、お待ちかねのタレントが登場しますよ。みなさん、バンバン撮影して、ガンガン拡散してくださいね」(意訳)とアナウンスするほどでした。

アクティブな消費者のほうが”金”になる

いっぽうイベントやプロモーションを仕掛ける企業側からすれば、おとなしくて外に出なくて、温度の低い大衆よりも、なにかといっては馬鹿騒ぎをし、外出し行った先々でお金を使う大衆のほうが、魅力的です。

そのため、これまで多くの企業・メディア・エンタメ・広告会社が躍起になって、おとなしい日本人にラテンのDNAを注ぎ込もうとし、とにかく騒ぐよう、騒ぐようたきつけてきました。が、その多くが寒々しく失敗に終わってきたわけです。

そんな強固な「人見知りコンサバ体質」が、SNSの登場によって一気に変わりつつあるのは感慨深いことです。

ハロウィンの常軌を逸した熱気は、まるでバブル景気の日本さながら(想像ですが)。仕掛け側からすれば「なーんだ、やっぱりみんな、騒ぎたかったんじゃーん。早く言ってよー」といったところでしょう。

海外ではさらなる体験イベントが

さて、話を映画に戻しましょう。

海外ではいち早く「映画は観るだけでなく、騒ぐもの・体感するもの」「好きなコンテンツは、体中で楽しむ」という意識が根付いていて、更に大規模な体験型鑑賞イベントが登場しています。

映画作品の世界観そのままのセットを広大な空き地に作り、観客がキャラの仮装をしてその世界観に浸ったまま、屋外スクリーンで映画を鑑賞する……。

またスクリーンの前にはステージが設置され、登場人物に扮した役者がスクリーンから飛び出して劇中のシーンを実際に再現する……。

来年以降、日本でもこうしたイベントが上陸してくる可能性はありますし、さらには、映画サイドも、みんなで騒ぎながら観ることを前提に作品を作り始めるかもしれません。

いつの日か「あいつは、静かに黙って映画を観るなんて、超寒い。空気が読めないヤツだ」とディスられる日が、くるかもしれませんね。

(五百田 達成)

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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