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「ひとり待ち合わせ」に「ひとり結婚式」…。SNS時代の「おひとりさまブーム」とは?

五百田達成作家・心理カウンセラー
photo by istolethetv

おひとりさまは本来、ひとりでも生きていける自立した女性という意味で、1998年にジャーナリストの故・岩下久美子さんが提唱した言葉。ですが現在では女性に限らず「通常ふたり以上でするようなレジャーや趣味を、ひとりで楽しむライフスタイル」として浸透しています。

ひとりカラオケにひとり焼き肉と、気兼ねなくマイペースに楽しみを謳歌する傾向は、衰える兆しを見せません。その背景にはなにがあるのでしょうか?

ひとりカラオケは、みんなカラオケの裏面

「ワンカラ」は、ひとりカラオケ、いわゆる「ヒトカラ」をしたい人専用のカラオケボックスで、2011年に一号店、神田店がオープンしてから、山手線沿線を中心に店舗数を増やしています。ワンカラの誕生により、ひとりカラオケはぐっとハードルが下がり、親しみやすいものとなりました。

大学生にヒアリングすると、みんなで行くときにはその場の空気に合わせて盛り上がれる曲をチョイスし、自分が歌いたい歌はヒトカラで熱唱する、という声が大半。一昔前のカラオケといえば、それぞれが勝手に歌いたい歌を選曲していたわけで、隔世の感があります。

このようにひとりカラオケは、場の空気を読んでキャラ・モードを使い分けることから来たトレンドとも言えそうです。

ひとり焼肉は、媚びないアピール

数年前、芸能人の篠田麻里子が以前、ツイッターに「ひとり焼肉なう」とツイートし話題になりました。友達などを誘ったりする手間なく気軽に焼肉が楽しめることから、定着しつつあります。

ドラマ「結婚できない男」(2006年)でも独身を謳歌する主人公が、ひとり焼き肉を楽しむ姿が描かれたように、焼肉はみんなでワイワイというイメージが強い食事の代表格。だからこそクールさが際立つ。

「ひとり焼き肉」は、このように「周囲に媚びない」ことをアピールすることが目的の行為とも言えるかもしれません。

ひとりバーベキューを支える便利アイテム

肉を焼くといえば、これからの季節、会社の同期で大学のサークルで、バーベキュー企画が企画されることも多いはず。ですがこれも、仲間を募ってみんなで集合・移動して、と手間がかかるのも確か。

あるアウトドアメーカーからは「SOLO BBQ GRILL(おひとりさまバーベキューグリル)」なるものが発売されていて、おひとり様サイズの超コンパクトなグリルは、組み立ても楽。いつでもどこでもひとりバーベキューを楽しむことができます。

ビールを片手に旬の食材を独り占め……。悪くないかもしれません。同じようにアウトドア界では、ひとりキャンプも注目されていて、各業界からも「ひとり○○」マーケットは注目を集めています。

ひとりディズニーは、マニアの証

芸能人と言えば、俳優の風間俊介、FUJIWARA・藤本敏史が楽しんでいることで話題になったのが、ひとりディズニー。とくに、年間に何百回も訪れるようなディープなファンからすると、ひとりでも、みんなでも楽しめるのが、真のディズニー通といいうことなのでしょう。

つまりこの場合、「ひとりでも行くぐらい、これが好き」という、マニアの証として機能しています(これが芸能人であればなおさらで、「ビジネスひとりディズニー」と言っても過言ではないでしょう)。

ひとり結婚式は、女性の夢をかなえる

また、最近雑誌などで話題なのがひとり結婚式。

旅行会社のチェルカトラベルが2014年6月から始めたプラン「ソロウェディング」は、女性が一泊二日で京都に行き結婚式気分を味わえるサービス。30〜50代に人気で、費用は30万〜50万円ほど。

プランの内容としては、二日間かけて、ウェディングドレス選び、ブーケ作り、プロによるヘア、メイクアップ、素敵なロケーションでの写真撮影、となっています。

結婚の予定はないけれども、どうしてもウェディングドレスが着たい、という人に向けて発案されたようで、友達と二人での参加や、母娘での参加も。

ひとり待ち合わせを楽しむ剛の者

また、これは私の知人のエピソードですが、彼は「ひとり待ち合わせ」を趣味として楽しんでいるのだとか。

クリスマスやバレンタインなどの季節、街はデートの待ち合わせをするカップルで溢れています。お洒落な服、気合いの入ったメイクや髪型、目線は携帯電話に落ち、どこかそわそわした様子。

そこに、誰かと待ち合わせしているわけではないが、ひとりで華やいだランドマークに赴き、まるで誰かを待っている風を装って時間を過ごす。これがひとり待ち合わせです。当然、待ち合わせ相手は現れず、ひとしきりその雰囲気を楽しんだあとは、おもむろに帰宅するのだとか。

ちなみにその彼は、春になると「ひとり花見」を楽しむ、なかなかの強者。できそうでできない、でももしかしたら、できるかも?と思わせるリアル「おひとりさま」です。

実はどれもひとりではない!?

さて、いくつかの「おひとりさま」「ひとり○○」をチェックしてきましたが、こうした流行に共通する背景としては何があるでしょうか?

最大の要因は、SNSの普及。

現代において、ひとりで何かをしているときでも、SNSでそれをネタのように誰かと共有することがほとんどで、そうなるとどの「ひとり○○」も、厳密には「ひとり」ではなくなります。

例えばツイッターに「ひとり焼肉なう」とツイートすれば、すぐに友達から「どうした?」とか「誘ってよ!」とかリプライが来る。例えばフェイスブックに「ひとり花見もいいものです」と書き込めば、「分かる」「俺も先週やったぞ」とコメントがつく。

その昔、女性がひとりで定食屋でご飯を食べている姿は、寂しさのシンボルでしたが、現在、スマホなどをいじらずに食べている人を探す方が難しい、というもの。

この時代、ひとりは決して寂しいものではありません。というか、本当の意味でひとりになることはとても難しい。

SNS時代の「ひとり○○」とは?

SNSを通じて不特定多数の人といつもつながっているため寂しさが薄れる「ひとり◯◯」。そのハードルはどんどん低いものになっています。

スマホを持たず、写真も撮らない。なにかのキャラをアピールするわけでもない、本当の「ひとり○○」。あなたには、できますか?

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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