花粉症は完治する!? 「耐える」から「治す」へ。
春は憂鬱な季節
各地で桜の開花も相次ぎ、週末はお花見という人も多いはず。
そもそも春とは、新しいスタートを切る学生や新社会人の発する前のめり感と、コートを脱ぎ捨てる解放感に、誰もが心浮き立つ季節、のはずでした。
しかし、「日本人の2割」とも「4人に1人」とも言われる花粉症持ちの人にとっては、それどころではありません。
2月〜4月はスギ花粉のピーク。卒業式、送別会、年度末の飲み会、入社式、歓迎会、お花見などなどイベントが目白押しのこの季節は、花粉症シーズンともろにかぶっています。
もはや、春とは、気持ちのいい旅立ちの季節ではなく、酷暑や厳寒のような、見えない敵と戦う憂鬱な季節となってしまいました。
「舌下免疫療法」が一筋の光
そんな花粉症に悩む人々に一筋の光が差し込みつつある、と話題になっています。
「舌下免疫療法」という画期的な治療が、昨年から健康保健の適用に。これは症状を軽くする「対症療法」ではなく、れっきとした「治療法」。「治ることはない」とされていた花粉症が「保険で治せる」時代がやってきたのです。
治療の仕組みは、アレルギーの原因である「アレルゲン」を体に少しずつ入れて、体を慣らしていくというもの。これまでもこの治療はあったのですが、注射を用いるものが一般的でした。そうすると年単位での通院が必要になり、ハードルが高かったわけです。
しかし、今回保険適用になった舌下治療は薬を舌下に垂らすだけ。これであれば、手軽に自宅でできます! 年間3、4万円程度で治療が受けられる(3割負担の場合)うえに、「7〜8割は症状が軽くなる」「症状がなくなる人も」と効果は保証済みで、おのずと期待が高まっているのです。
即効性があるものではないのですが、昨年の秋から開始している人なら、ちょうどいまごろ、効果が出ている計算。
レーシックによる近視矯正が登場したころのように、「花粉症? ふふふ、治しちゃったんだよね〜」という人を見かける機会が増えそうです。
人類と花粉の闘いの歴史
これまでの人類と花粉との戦いは、人類側の防戦一方でした。
僕自身は「ここ数年始まりかけ」ぐらいのライトな花粉症なのですが、ヘビーな人は鉄の意志を持って、徹底的に防御を固めています。
外出時はマスクにメガネ。部屋にいるときは窓を閉めるなりして花粉の侵入を防ぐのは基本の基本。室内には上質のティッシュと空気清浄機が欠かせません。
洗濯物は室内に干し、帰宅時にはコートに付いた花粉をふるい落とし、目に見えない敵を排除。春風を感じるために、気持ちのいい休日に窓を開け放していたころが懐かしみつつ、花粉を忘れられる唯一の安全地帯は浴室のみという毎日。
目に見えないはずの敵が、窓ガラスや車のボンネットに付着して姿を現わす時が、最も心が乱れる瞬間だそうで、恐怖の悲鳴を上げることに……。
花粉症は哲学だ
症状を抑える薬も、効き目の強い錠剤から漢方やサプリのようなものまでいろいろあって、自分に合うもの合わないものを見極め、それが効かなくなれば更に強いものに手を出していきます。
かれこれ10年以上花粉症と闘っている知人は「いつか薬が効かない日がくるのではないかという不安はあるが、今はあるものを飲むしかない」と悲壮な決意を語ります。
とりあえずひたすら目の前の問題を解決していく人もいれば、できるだけ薬は使わずに、花粉症に効く食べ物、飲み物など体質改善から取り組む人もいます。
鼻の粘膜を焼いたりと最新の治療に果敢にチャレンジする革新派がいれば、鼻水を垂らしながら意地でも花粉症だとは認めず、根性で何とかしようという精神論者も(笑)。
もはやここまで来ると「哲学」ともいうべき精神世界が展開されます。
仲間意識から絆が生まれる
戦い方はそれぞれですが、同じ敵と戦っていれば、仲間意識が芽生えてくるのは自然なこと。
この時期にマスクをしていれば、挨拶がわりに「花粉症?」と聞かれますし、苦しむ仲間同士とわかれば「薬何飲んでます?」「○○は全然眠くならないですよ」なんて、情報交換もでき一気に親密度が増したりするものです。
人間ドックの結果(しかも悪い結果)を自慢しあうおじさんたち同様、健康トークは世間話の鉄板です。
花粉症じゃない人も「花粉症トーク」を避けて通れない
このように、今や押しも押されぬ「季節の風物詩」の地位を確立し、健康トークを哲学レベルに引き上げるほど生活に根付いているとなれば、現在花粉症でない人も、花粉症トークをスルーすることはできません。すべての人が花粉症予備軍であり、いつ自分もなるか分からないのですから、なおさらです。
週末のお花見では、マスクで参加という人も多いことでしょう。
「舌下治療法」というホットなトピック。花粉症の人はもちろん花粉症ではない人も、チェックしておいて損はなさそうです。
■参考記事
ももクロ映画「幕が上がる」に学ぶ人づきあいのコツ【「演技」でいい。というか「演技」であるべき】