大河ドラマ「花燃ゆ」の失敗マーケティング。「女性向け=恋愛&ピンク」の限界。

 NHK大河ドラマがスタートして、ひと月が経ちました。

 幕末を生き抜いた若者たちを、吉田松陰の妹・文の視点から描いた「花燃ゆ」。幕末期は歴史ファンの間でも人気が高く、2004年の「新選組!」に代表される、はずれのない鉄板ジャンル。また、女性を主人公にすえ激動の時代を体感させるストーリーは、2008年に大ヒットした「篤姫」ともオーバーラップします。

 「これはもう、高視聴率間違いなし!」かと思いきや、初回の視聴率は史上ワースト3という残念な結果に。その後も、苦戦が続いている様子です。

イケメン起用&恋愛ドラマ風ポスターに違和感

 ある友人の女性は大河ドラマの大ファン。いわゆる「歴女」ではないのですが、今年の「花燃ゆ」も楽しみにしていたそう。しかし宣伝ポスターを見たときに、大きな違和感を持ったと語ります。

 ポスターはどれも、主演の井上真央とイケメン俳優が見つめあったり、膝枕をしたりとイチャイチャしている構図。極めつけは、コピーが「幕末男子の育て方」だったこと。

 この作品は女性を主人公にすえ、さらに周りを取り巻く志士に旬の若手俳優を起用するなど、明らかに女性をターゲットとしています。制作側も「ぜひ女性に見てほしい。そのための入口としてイケメン俳優たちをキャスティングした」と全面的にアピール。

 ですがそうあからさまにアピールされると、鼻白んでしまうのが現代のユーザー心理。

 彼女も「これじゃ、ただの恋愛ドラマみたい」「イケメンさえ出しておけばいいと思われている」「大河ドラマそのものを好きな女性だっているのに」と首をかしげていました。

文庫女子騒動の原因、女=モテ

 先ごろ話題になった「文庫女子騒動」を覚えているでしょうか?

 都内の書店が、女性向けの販売促進の企画として「本当は女子にこんな本を読んでいて欲しいんだ。」と称したフェアを実施。独自にセレクトした作品を「SFに理解のある女子は100%モテる」「こんな文庫を読んでる女性がいたら、それはまぁ、好きになっちゃうよな」と紹介する趣旨でした。

 しかしこれに非難が殺到。「モテるために本読んでるわけじゃない!」「普段読んでる本を決めつけられたくない!」といった意見が相次ぎ炎上し、フェアは取りやめに追い込まれました。

恋愛マーケティングが効かない

 「幕末男子」ドラマと「文庫女子」騒動。どちらも根底にあるのは「若い女性をターゲットにしよう!→よしじゃあ恋愛/モテ要素を入れよう!」という発想でしょう。

 実際、マス(大衆)としての女性層を動かすにあたり、恋愛というスパイスは、まだある程度有効かもしれません。

 しかし、大河ドラマや書籍は好みやこだわりが強い世界。発信側の意図が透けて見えるマーケティングには、敏感に反発してしまうユーザーたちだったと言えるでしょう。

なぜ「ださピンク」が生まれるか

 昨年後半、Twitterで話題になった「ださピンク」にも同様の教訓が含まれています。

 一般に、女性をターゲットにしようとすると、上層部やおじさんたちは「女性はピンクが好きなんでしょ? じゃあピンクにしとこう!」と短絡に発想。

 彼らにとって「ピンクはピンク」ですから、微妙な色味の違いや、配色のバランス・世界観などに留意できるはずもない。結果として見るも無惨な「ださいピンク」が生まれて、広告も効かないし商品も売れない……。

 そういった傾向を揶揄して生まれたのが「ださピンク」という言葉。これも、「女子」というターゲットをひとくくりに、安易に考えることからくる失敗の事例でしょう。

女は一つにあらず

 現代の企業社会は、まだまだ男性優位。女性向けの商品を扱い、女性の活躍がフィーチャーされている企業でも、特に老舗の大手ともなれば内実は男社会です。

 男に女は分からない。分からない中で、かすかなヒントにすがろうとする。その結果、「恋愛」になる、「ピンク」になる、「イケメン」になる、というわけです。

 きめ細やかなマーケティングが欠かせない現代において、「若い女の子」「F1層」といったくくり自体が、前時代のものとなりつつあります。

 今後、女性向けに「ピンク」や「恋愛」を打ち出したものを目にしたら、その裏に緻密な計算が感じられるか、はたまた残念ながら安易な発想としか思えないか、チェックしてみると面白いでしょう。

バレンタインデーの攻防

 折しも来週末には、一大商戦・バレンタインデーが控えています。

 女子を動かしたい大人たち。ちょっとやそっとでは動かない女たち。

 女子とおじさんとピンクと恋愛を巡る攻防は、今後ますます熱を帯びることでしょう。

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