いま、政治や行政と私たちをつなぐ試みを続ける若者に注目が集まっている。

伊藤和真さん22歳。政治家や有権者が直接政策提言することができるプラットフォーム「PoliPoli」を19歳で立ち上げ、先月、省庁と私たちとをつなぐ新たなサービス「PoliPoli Gov」をスタートさせた。

今日は衆議院議員選挙の投開票日。かつては政治に全く関心がなかったと言う伊藤さんに、どのような思いで私たちが政治へ「参加」すれば良いのかを聞いた。

◆国民と政治との間に起きている「エラー」

PoliPoli Govはデジタル庁に採用されたサービス
PoliPoli Govはデジタル庁に採用されたサービス

堀)

「PoliPoli Gov」が公開された経緯を教えてください。

伊藤)

そもそも僕らは議員さん向け、政治家さん向けに 共創プラットフォームの「PoliPoli」というのをやっていて、そもそも日本において行政の方が具体的な政策を作ったりするんですよね。政治家が大きなビジョンをつくって、行政の方々がそこからもっと詰めていくという流れなんです。

僕らは行政の方々にこそ「PoliPoli」を使って欲しい、何かしら貢献したいということを創業当初から思い、構想自体もありました。準備も進めていたのですが、なかなか進まなかった。

それが今回デジタル庁から「国民との共創による政策実現のためのコミュニティプラットフォーム実証事業」への参加事業者の募集があり、「めちゃくちゃいい」と思い応募、採択していただきました。

堀)

行政と人々が繋がる場所をつくりたい、なぜ行政向けのサービスに拘ったのですか?

伊藤)

行政って「政策を行う」と書いて「行・政」だと思いますが、実際には政策を立案して国民に届けるというところまでやっているので、実際には政策立案のプロセスがあるんですよね。

そこが行政機関内や既存のネットワークだけだったりすると限界があるというか、この多様な社会においてはいろいろな人たちがそのプロセスに入るということが大事だと思っていて。

一方、行政機関側もオープンガバメント、開かれた政府、というものに対してやりたいというニーズがあって、僕ら国民側もいろいろなことを伝えたいという思いがあり、この両者を繋げていきたいというのが根底にある思いですね。

撮影:堀潤
撮影:堀潤

堀)

そう思わせた背景は何ですか?

伊藤)

僕は最初政治に興味がなくて、たまたま「PoliPoli」というサービスを立ち上げてここまで本気で取り組むことになったのですが、議員さんたちと3年間くらい共に過ごしてみて、政策立案者側、政治家も行政機関側も人々の声を熱心に聞こうとしているんですよ。

でもそれがなかなか、聞きにくかったり、聞けていなかったりとかですね、一方国民側も国民側で、なんで聞いてくれないだと怒ったりとか、そういうすれ違った想いというのはもったいないなと。

批判し合うのではなく、一緒に考えるというか、共に創るというプラットフォームをつくりたいという思いがあります。

堀)

そのエラーは僕も感じるところです。

この10年を振り返ってもその繰り返しだなと思っていて。2012年にアメリカのUCLAに留学していて、その頃、ホワイトハウスは「WE THE PEOPLE」という陳情サイトをつくっていて、人々が政府に対して政策を提案してある程度の人々の指示がSNSなどで集まるのを条件に、クリアすると実際に大統領や政府高官が検討して報告するなどオープンガバメントの仕組みを導入していて刺激を受けました。

国や自治体が持っている情報を公開して、民間の参入者を促す試みであったり。日本に帰ってくると、行政からの説明会というのは一方的だし、パブリックコメントは募集しているけどどこまで採用されるのか実感がわかなかったんですよね。

伊藤)

直に接してみて、政治家さんや行政機関側も意見を聞きたがっているというのは感じるんですよね。

ただなんかサボっているとかだけではないんですよね。意見は聞きたいけれど業務が忙し過ぎて聞く余裕がないとか、そもそも聞く手段がなかったりとか、そういう問題もあると思っています。

そういう点こそ「デジタル民主主義」、新しい技術を活用して、投票以外の場で政治家に直接意見表明ができる仕組みがあること、こうした複雑で多様な社会であるからこそつくっていくということが時代の必然かなと思っています。

堀)

間もなく総選挙がありますが、政治家にとっては政策が民意を引きつけるアピールポイントとして使われるに留まったり、与野党の政治的駆け引きになっていくところもあると思います。

一方、行政機関側、官僚の皆さんに取っては政策の遂行というのは少し意味が変わってくるのかもしれない。伊藤さんはどう思いますか?

伊藤)

行政機関は政策を作り、実行する機関なのでニュアンスは政治側とは違ってくるかもしれませんが、本質的には国民の皆さんが幸せになるということであったりとか、いい政策をつくって社会を良くするというのはどちらも共通している点だと思うので、「PoliPoli」「PoliPoli Gov」は共に共創するためのプラットフォームとして変わらないのかなと思っています。

◆自分を突き動かす感情と成功体験

堀)

伊藤さんを突き動かすのは、怒りですか?それとも不満、または別の感情ですか?

伊藤)

僕はあんまり怒りとかで動かないんですけど、いろいろな人が幸せになったらいいなと思っています。僕自身大学まで入れていただいたりとか、様々な人に助けられてここまできて、恩返ししたいという思いもあります。

せっかく生まれたからには自分を含めていろいろな人が幸せになること、「幸福度を最大化する」というのを僕の人生のテーマに掲げているんですが、それをやるのがインターネットサービスであったり、政治やつくられた政策が世の中の根本、人々が意識しなくても関わってくる仕組みだと思っているので、ここを良くすることが僕の人生にとって一番いいことなんじゃないかと思い、動かされていますね。

堀)

どうしてそこまで思えるのか?

伊藤)

やっぱり大事だと思えているからだと思います。

政策をつくるということとか。僕は政治家や行政に失望されている方が多いと思うのですが、僕にとってはそこに成功体験があるというか、実際に谷口歩実さんとご一緒しましたが「生理政策」が動いたりとか、それでいろいろな人が幸せになったりとかをみているので、そういう政策が社会を変えるという成功体験があるので、違うかもしれませんね。

堀)

「幸せ」という言葉をもう少し分解すると、どういう状況のことを指していますか?

伊藤)

幸せの概念は難しいですが、僕は満ち足りている状況のことだと思っています。健在的なニーズもあれば、潜在的なニーズ、両方あると思いますが、現実と照らし合わせてそれらが満ち足りている状況が幸せだと思っています。

堀)

今回、デジタル庁に若い世代の技術が採用された、ベンチャー企業が参入したというのはこれまでの状況と比較すると大きな出来事だと思うんですよね。

必要だとされてきた動きが実現したわけですし。当事者としてはどのような受け止めですか?

伊藤)

デジタル庁さんが、僕らみたいな年齢もありますが、立ち上がってまもない小さなスタートアップのサービスを使って一緒に実証実験、共につくっていくというのは、その器の大きさに感謝していて。

ただ、インターネットサービス、会社としてやってる以上、年齢が若いから許されるからというのはないです。そこは責任を持ってやるしかないという覚悟はあります。それは起業した時からそういう思いです。

◆横断歩道を渡っている時にみた光景

撮影:堀潤
撮影:堀潤

堀)

この国のデジタル政策を振り返ってみると、必ずしも上手くいっていない。

コロナ禍においてもCOCOAの開発やオリパラアプリの不祥事、マイナンバーの活用一つとっても再分配の仕組みとしてうまく使われていないという点であったり、どこにエラーがあると思いますか?そして、どのように課題を解決していきたいと思いますか?

伊藤)

僕らができることとしては、いろいろな視点を入れる、それこそスタートアップであったりとか、民間の第一線で活躍している人や、技術を持っている人達が政策立案のプロセスに関わることができる、それが大事だと思っています。

日本全体を「1億人の組織」と考えると、課題や問題がたくさん出てくるのは仕方がないと思うんですよ。僕も10人くらいの会社をつくっていますけれども、いろいろな問題が出てきて、これを1億人でやるんだと思うと大変だなと思うんですね。

だから、これをミスったから国はだめだ、信頼できない、ではなくて「これがダメなら、こういうのがいいんじゃない?」とみんなが一緒になって政策をつくっていくことが求められていると思いますね。

堀)

どんな未来を望みますか?

伊藤)

ポリポリとしては世界のインフラとなる仕組みを作っていきたい。僕が描く未来像としては、いろいろな人が政策を作る、世の中の仕組みづくりに携わることで納得ができる、これだったらしょうがないよねという政策をつくることだと思っています。

日本は少子高齢化、人口減少、経済成長の鈍化が進み、当然、税金を納める人も減っていきますし、医療福祉サービスを受ける人も増えていきます。

そうなったらマクロ的なトレンド、いろいろな人が満足できる一つの政策をつくりづらくなっている。だから政策をつくるという点では無茶苦茶難しい世の中になっていると。

それは今の政治家や行政がダメと言うことではなく、マクロ的なトレンドにおいて難しくなってきていると思っていて、そこにおいて必要なのは、いろいろな人が立案のプロセスに入って、納得ができる政策をつくっていくしかない。

それがもうこの数十年は必要になってくると思っています。

堀)

伊藤さんにとって「公共=Public」とは何ですか?

伊藤)

公共って何ですかね。

僕は政治とか、会社のミッションとかを考えるときに散歩していたんですよ。そしたら目の前に、お母さんと赤ちゃんが歩いていたんですね。

それを見て、こういう人たちのために、いろいろな人たちのためにあるなと思って、何かフワッとしたものではなくて、一人一人の生活や幸せが集まってできたものが「公共」だと考えます。

そう言うほんとにミクロな生活をより幸せにする、と言うのが大切だなと思っています。(了)

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伊藤和真(22歳)

2018年春に毎日新聞社に俳句アプリを事業売却。現在、政治プラットフォーム PoliPoliを運営する株式会社PoliPoli代表。 慶應義塾大学4年生。現役学生としてはじめて、九州大学にて非常勤講師をつとめた。Global Shapers、TOKYO MX「モーニングFLAG」 コメンテーター等

※伊藤和真さんと堀との対談はこちらの動画にまとめてあります。こちらからぜひご覧ください。