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40代前半が最多利用者…鉄道利用の年齢階層別実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
旅行で鉄道を利用する高齢者も多いようだが(写真:アフロ)

通勤や通学、買い物で多くの人が利用し、日常生活には欠かせない公共交通機関、鉄道。利用客の中でどの年齢階層の人達が一番多いのだろうか。国土交通省の調査「大都市交通センサス」(※)の結果から検証する。

次に示すのは、首都圏における鉄道利用者を年齢階層別に区分したもの。公開値には乗車以外に降車のデータもあるが、回答ミス以外は原則として乗車すれば必ず降車するので、乗車のデータで年齢を確認する(無論、乗車と降車の時刻にはずれが生じていることもある)。例えば15歳未満は1.8%とあるが、これは全鉄道乗車者の1.8%が15歳未満であることを意味する。

↑ 鉄道乗車数構成比(年齢階層別)(2015年)
↑ 鉄道乗車数構成比(年齢階層別)(2015年)

最多年齢階層は40代前半で11.4%、次いで45~49歳の10.4%。40代で全鉄道乗車者の2割強を占める計算となる。大学生ぐらいから壮年層までは9%前後が維持されているが、50代後半になると値が急に落ち込む(50代前半からとも解釈可能)。現役世代ではあるが、高齢になると鉄道での通勤がつらくなる、あるいは鉄道を使わなくてもよい立場に就く、さらには鉄道通勤をしなくてもよい職場に異動する人が多くなるのかもしれない。

他方、70歳以上の区分では5歳区切りではないものの、6.1%と大きな値が出ている。これは後述するように、仕事や業務ではなく私事、おそらくは旅行や買い物に鉄道を使うケースが多々あるものと考えられる。

これを主要な目的別に区分した結果が次のグラフ。

↑ 鉄道乗車数構成比(年齢階層別・目的別)(2015年)
↑ 鉄道乗車数構成比(年齢階層別・目的別)(2015年)

全体では現役世代の利用率が高いのは前グラフの通りだが、通勤や業務ではその割合がさらに大きなものとなる。未成年者や高齢層では就業をしていない人が大多数なのだから、当然といえばそれまでの話だが。その通勤や業務だが、おおよそ同じように見えるものの、いくぶんながらも業務の方が中年層以降の割合が大きくなっている。これは前述の通り、就業先が鉄道利用による場所ではない(大部分は自宅そば、さらには自宅そのものの自営業など)ものの、業務の上では鉄道を利用しているケースが多々あることを推測させるものである。

通学は当然ながら大部分が未成年者、あるいは20代前半。20代前半は大学生だろうが、通学目的で鉄道を利用している人のうち1/3以上は大学生ということになる。

私事では業務以上に中年層から高齢層、特に高齢層の割合が大きなものとなる。60歳以上で3割以上を占めている。定年退職を迎えた後、旅行や買い物などで鉄道を利用する人が多々いるのであろう。

今件データは2015年時点のもののため、高齢化が進み、新型コロナウイルスの流行で就業スタイルに大きな変化が生じた現在では、小さからぬ違いが生じている可能性がある。次の調査の結果と、今回の値との比較は社会の大きな変化を実感させてくれるものになるだろう。

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※大都市交通センサス

基本的に5年ごとに首都圏、中京圏、近畿圏の三大都市圏を対象に、鉄道やバスなどの大量公共交通機関の利用実態を確認するために行われている調査で、直近は2015年に実施されている。2015年の調査では鉄道利用者に対しては2015年11月17日~19日にかけて対象駅での調査票の配布・郵送かオンラインによる回収方式で実施されており、有効回答数は233万人。また鉄道における自動改札機のデータによる調査も併せて実施されている。なお本来は2020年に調査が実施されるはずだったが、新型コロナウイルスの流行を受けて中止されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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